米国防総省、中国の「北極近接国家」認めず


戦略文書で進出牽制

 米国防総省は8日までに、北極海についての戦略文書を発表した。その中で、「中国は自らを『北極近接国家』と主張するが、米国はそのような立場を認めない」と進出を図る中国を牽制(けんせい)。また、中露両国が、ルールに基づく秩序を脅かしているとして、北極圏における米軍の作戦能力を強化する方針を示した。

雪龍2号

中国の極地観測砕氷船「雪龍2号」=2018年9月、上海(EPA時事)

 戦略文書は、「北極地域は、北極圏に主権的領土を持つ8カ国によって構成されている。米国はこの8カ国以外の国による北極における立場についていかなる主張も認めていない」と強調。中国について「この地域に領土がないにもかかわらず、北極を統治する役割を求めている」と批判した。

 また、中国は「シルクロード経済圏構想『一帯一路』の一環として、北極圏での経済活動をより広範な国家の戦略目標と結び付けている」とし、軍民両用のインフラへ投資しようとしていると指摘。中国が北極圏に砕氷船を派遣するなどしていることについて、「将来、潜水艦を展開するなどしてこの地域における軍事的プレゼンスを高めることに役立てる可能性がある」と警戒感を示した。

 ロシアについては、北極海に面した海岸沿いに軍事基地の建設を進めるほか、空港などインフラの改修を進めていると指摘。防空システムや沿岸ミサイルシステム、早期警戒レーダーの整備を行うなど、軍事的なプレゼンスを強めているとした。

 さらに、ロシアや中国が勢力拡張を図る中、北極圏は「拡大された大国間の競争と攻撃のための通路となり得る」として、インド太平洋地域と欧州を結ぶ通路として、競合国との対立において重要性が高まっているとの認識を示した。

 その上で、中露両国による侵略行為を抑止するため、極寒地での訓練を行うなどして北極圏における米軍の作戦能力を高めるとともに、同盟国やパートナー国との連携を強化する方針を示した。

(ワシントン 山崎洋介)