ベネズエラ 国際赤十字が人道支援へ


グアイド派、政権の矛盾追及

 政情不安が続く南米ベネズエラからの報道によると、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)のロッカ会長は29日、首都カラカスで記者会見し、深刻な食料、医薬品不足に悩む同国内で、半月以内に人道支援を開始すると発表した。

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栄養失調で入院しているベネズエラの子供(左)と傍らで横になる母親=2月7日、北部マラカイ(AFP時事)

 ベネズエラでは、ハイパーインフレと外貨不足で生活必需品が極端に不足しており、隣国のコロンビアなどに350万人を超える難民が流出する事態となっている。ロッカ氏は、支援開始に当たり、まずは65万人程度を対象とした食料と医薬品の支援を行うと説明した。

 野党指導者のグアイド国会議長は、「支援物資抜きでは30万人が飢餓状態に陥る」と政府を批判、米国やブラジルなどに人道支援を要請してきた。

 グアイド氏の要請を受け、米国から送られた大量の支援物資が隣国のコロンビアやブラジルの国境近くに集められたが、反米左派のマドゥロ大統領が「人道支援は米国による介入の隠れみのだ」と反発して物資の搬入を阻止してきた。先月末には、ベネズエラ国内への支援物資搬入を図る民衆と治安部隊の衝突が発生、数百人の死傷者を出す事態となった。

 今回の人道支援に当たり、赤十字側は、「政治的な中立と独立性を守り、(支援内容や方法に関して)いかなる政治的干渉も受け付けない」と主張している。

 一方、マドゥロ大統領は「ベネズエラに人道危機はない」と断言してきた経緯があり、反大統領派は早くも「赤十字の支援を受け入れることは人道危機を認めることだ」(グアイド氏)と政府側の矛盾を追及している。

 こうした中、29日には中国からの支援物資が空路で首都カラカスの空港に到着、マドゥロ大統領が中国政府に謝意を表明した。野党指導者のグアイド氏が米国やブラジルなど世界50カ国以上の支持を得ているのに対し、マドゥロ大統領は、中露やキューバなどが支援を表明している。ベネズエラは、中国からこの10年で約500億ドル(約5兆5000億円)相当の支援を受けているといわれる。

(サンパウロ 綾村悟)