米大統領が非常事態宣言


「壁」建設に80億㌦投入
民主党は法廷闘争の構え

 トランプ米大統領は15日、メキシコ国境からの不法移民の流入が「国家の安全保障を脅かしている」として国家非常事態を宣言した。これにより、議会が承認した予算と合わせて約80億㌦(8800億円)を国境沿いの壁建設に投入する。野党・民主党は「憲法違反」と反発。法的手段によって対決する構えだ。

トランプ大統領

トランプ大統領(AFP時事)

 トランプ氏はホワイトハウスで15日に行われた会見で、「麻薬や犯罪者、ギャングが侵入するのを阻止する」と壁建設の意義を強調。その上で「国境における国家安全保障の危機に立ち向かう」と訴え、非常事態を宣言した。

 トランプ氏は、今年9月末までの支出を手当てする予算案にも署名。政府機関の一部閉鎖は回避された。

 今回成立した予算案には、メキシコ国境沿いの90㌔に物理的障壁を建設するため13億8000万㌦が盛り込まれた。これに加え、非常事態宣言などの大統領権限によって他省庁の予算から67億㌦を国境の壁建設に振り向ける。

 内訳としては、非常事態宣言に基づいて国防総省の建設事業費から36億㌦を活用。非常事態宣言とは別の大統領権限によって国防総省の麻薬対策費から25億㌦、財務省の基金から6億㌦を振り向ける。トランプ氏は、これまで376㌔に壁を建設する費用として57億㌦を要求していた。

 非常事態宣言に対して、民主党のペロシ下院議長とシューマー上院院内総務は声明で「存在しない危機に対する大統領の違法な宣言は、私たちの憲法に大きな打撃を与える」と非難。「あらゆる手段を使って、議会や法廷で憲法上の権利を擁護する」と述べた。

 トランプ氏は会見で、「私は訴えられると思う。下級審ではひどい判断が出るだろうが、最高裁では勝つだろう」と自信を見せた。

(ワシントン山崎洋介)