出生地主義を廃止するな

アメリカ保守論壇 M・ティーセン

憲法で保障された権利
修正14条は共和の偉業

マーク・ティーセン

 トランプ大統領は、衛星・ケーブルテレビ「アクシオス・オン・HBO」とのインタビューで、大統領令で出生地主義を廃止すると主張した。合憲性について聞かれるとトランプ氏はこう答えた。

 「議会が定める法律で絶対にできる。しかし、議会は今、大統領令だけでできると言っている」

 これは全く事実に反する。憲法修正第14条には、「合衆国で出生、またはこれに帰化し、その管轄権に服するすべての者は、合衆国とその居住する州の市民である」と記されている。これは、大統領令では変えられない。議会でも変えられない。憲法の修正が必要だ。

 少し前、トランプ氏は、オバマ前大統領の不法移民の子供を強制退去としない措置「DACA(ダカ)」を廃止した。トランプ氏は、DACAは違憲であり、大統領令ではできないからだと言ったが、これは正しい。今度は、大統領令で憲法を変えようというのか。

 保守派の中には、修正第14条を緩く解釈して、「その管轄権に服する」という文言があり、出生地主義には解釈の余地があると主張し、トランプ氏の提案を正当化しようとしている者もいる。これはおかしい。

 数週間前、同じ保守派の面々は、ブレット・カバノー最高裁判事の承認公聴会で、憲法の本来の意味に従って憲法の条文を解釈すべきだとする「始原主義」を主張していた。

 これは問題ない。この保守派の多くは、「規律ある民兵は、自由な国家の安全にとって必要である」という憲法修正第2条の条文は、一般市民が武器を所持、携行する基本的な権利を完全に保障するものではないという考え方に否定的だが、これは正しい。だが、右派には、都合のいいときは厳格な解釈を主張し、ある時は自身の政治的指向に合わせて「柔軟な解釈」を主張する者もいるようだ。

◇最高裁も支持判断

 アメリカン・エンタープライズ研究の同僚ジョン・ユー氏は、修正第14条についてはもともとの解釈が正しいと指摘する。

 「修正第14条の『合衆国で出生、またはこれに帰化し、かつ、その管轄権に服するすべての者』という部分は、米国領内で生まれた子供のことを指し、誕生時から米国法の支配を受ける。合衆国在住のほとんどの人々は、外国人であっても、合衆国の管轄下に入る。そうでないとすれば、領内の外国人は法を犯しても、罰を受けないということもあり得る。…保守派が修正第14条の解釈で指針とすべきと考えるその本来の意味は、出生地主義を支持している」。ユー氏は、最高裁は修正第14条のこの解釈を支持していると指摘した。

 「合衆国対ウォン・キム・アーク裁判(1898年)は、サンフランシスコで中国人の両親の元に生まれた子供の米国市民権を認めた。両親は、中国人移民排斥法のため帰化できない可能性がある。最高裁は、『修正第14条は、領内での出生者への市民権付与という古くからの、基本的な規則を支持している。その国への忠誠心を持ち、保護を受けていてもだ。それには、国内在住の外国人から国内で生まれたすべての子供が含まれる』と主張している。これが、外国人が、外国へ忠誠心を持っているからといって、合衆国の『管轄』下にないという主張を拒否しているのは明らかだ」

◇国境警備の強化を

 この前例を見れば結果は明らかだ。トランプ氏が廃止を進めたとしても、最高裁は十中八九、トランプ氏が指名した判事の反対を受けて、違憲と判断されるのを目の当たりにすることになる可能性がある。トランプ氏の主張は完全に否定されることになる。

 たとえ、オバマ大統領流のやり方で修正第14条を変えられるとしても、共和党議員らは、法と基本原則に照らして、決してそのようなことを望んではならない。ユー氏が指摘したように、修正第14条は、共和党の歴史的偉業の一つだ。

 「共和党議員らは南北戦争後、奴隷に関する法律の深刻なひずみを正すために、修正第14条の草案を作成した。ドレッド・スコット対サンフォード裁判(1857年)でロジャー・テイニー首席判事は、奴隷は、米国内で生まれても、米国市民にはなれないことに気付いた。修正第14条は、ドレッド・スコット判決を覆し、米国で生まれたものは誰であれ、いかなる人種であれ、米国市民であると宣言した。また、多数派支配主義の政治の中で、不利な立場に立つ人種的、宗教的、政治的少数派として生まれた子供の市民権が奪われないようにした」

 共和党は、ドレッド・スコット判決のいかなる要素も復活させようとしてはならない。リベラル派が都合のいい政策を正当化するために使う、緩い法解釈のようなもので、憲法を骨抜きにしてはならない。不法移民に出生地主義を適用したくないなら、まず、不法な入国を阻止することだ。国境警備を強化することだ。壁を造ることだ。憲法に触れてはならない。