右派ボルソナロ氏が当選、ブラジル大統領選決選投票


 南米の経済大国ブラジルで28日、現職テメル大統領の任期満了に伴う大統領選決選投票が実施され、即日開票の結果、右派で社会自由党のジャイル・ボルソナロ下院議員(63)が当選した。ボルソナロ氏は、「自由を祝う祝日だ。憲法と自由、民主主義を守る」と国民にメッセージを送った。就任は2019年1月1日で任期は4年。

ジャイル・ボルソナロ下院議員

元軍人のジャイル・ボルソナロ下院議員=28日、リオデジャネイロ(EPA時事)

 選挙高裁(中央選管に相当)によると、開票率99・9%で、ボルソナロ氏は55・2%を得票、対抗馬の左派フェルナンド・アダジ元教育相は44・8%だった。

 今回の大統領選挙は、左派・労働党政権下での巨大汚職事件による政治不信、景気の低迷、治安悪化の中、既存政治へ国民の不満が向けられる中で行われた。

 当初、ボルソナロ氏は少数政党の泡沫(ほうまつ)候補にすぎなかったが、2002年から16年まで続いた左派政権や既存政治家への不信が、若者や保守派を中心にボルソナロ氏への支持に結び付いた。

 同氏は、軍政賛美や女性蔑視など歯に衣(きぬ)を着せない発言で「ブラジル版トランプ」とも呼ばれる。ブラジル国内の保守福音派に支持層を持つこともトランプ米大統領似だ。刑罰強化による治安回復、銃規制緩和、公務員削減を通じた財政削減、市場開放の公約などを通じて保守や富裕層などから、幅広い支持を集めた。

 一方、左派系のアダジ候補は、「(ボルソナロ氏が当選すれば)民主主義の崩壊につながる」などと批判、低所得者層支援や公共投資の拡大を主張して貧困層を中心とした支援の広がりを目指したが、労働党の腐敗イメージが最後まで足を引っ張った。

 社会自由党は、今回の総選挙で下院第2党に躍進したものの、他の政党との連立や連携を模索する必要があり、ボルソナロ氏の政治スタンスに影響を与えることもありそうだ。

 また、同氏は、閣僚や知事などの重職を経験したことがなく、トランプ米大統領のようにビジネス界での交渉に長けているわけでもない。それだけに、就任を前にしての国民へのメッセージ、就任後を見据えた議会工作、マスコミ対応、外交政策など、しばらくは政治家として力量を計ることになりそうだ。

(サンパウロ綾村悟)