右派と左派の一騎打ち 7日、ブラジル大統領選


南米全体に大きな影響

 ブラジルで7日、現職テメル大統領の任期満了に伴う大統領選挙が実施される。過半数の票を獲得する候補がいない場合、28日に上位2候補による決選投票が行われる。支持率で首位を走る右派ジャイル・ボルソナロ下院議員(63)と、2位につける左派フェルナンド・ハダド元サンパウロ市長(55)による決選投票にもつれ込む可能性が高い。

ボルソナロ氏

ボルソナロ氏(AFP時事)

 ダッタ・フォーリャ社の最新世論調査によると、ボルソナロ氏の支持率32%に対し、ハダド氏は21%、3位で左派のシロ・ゴメス候補の支持率は11%にとどまっている。

 右派のPSL(社会自由党)から出馬しているボルソナロ氏は、軍政支持や女性蔑視、人種差別的な発言を繰り返すことから「極右」などと反発する有権者も多い。だが、そのはっきりとした物言いや中絶、同性愛に対する意見など、キリスト教保守派も含めて同氏を支援する層が次第に厚くなっているのも事実だ。最近では「左派系候補には投票したくない」という中道派の支持も集めている。

 同氏は、6月の遊説中に暴漢に襲われて重傷を負った。先週末に退院はしたものの、いまだ選挙戦には復帰できていない状況だ。決選投票となった場合、同氏が所属する社会自由党は少数政党で組織的な集票力はない。このため、接戦となった場合、ボルソナロ陣営がどのような対応ができるか注目される。

ハダド氏

ハダド氏(ブラジル通信)

 一方、ハダド氏が所属する労働党は、2016年まで政権を担当していたブラジルの主要政党だ。支持基盤の労働組合を含め組織力ではボルソナロ陣営を圧倒する。ハダド氏は全国的には知名度が低いが、収賄罪で収監されながらもいまだに高い人気を保つルラ元大統領の全面的な支援を受けている。その影響もあり、ハダド氏の支持率は9月初めの出馬決定時から14ポイント近くも上昇した。

 ただ、ハダド氏と労働党も、貧困層へのバラマキともいえる過去の社会政策や公約に対して反発する有権者も少なくない。

 ブラジルは、南米経済の要でもあり、政治・社会的影響力も強い。隣国ベネズエラをめぐっては、反米左派マドゥロ政権の独裁化に加えて、経済崩壊から大量の難民が発生し隣国に流れ込んでおり、ブラジル次期政権の対応は重要だ。このため、ブラジル大統領選の行方は国内外から注目を集めている。

(サンパウロ綾村悟)