北と取引の中国金融機関への制裁めぐりホワイトハウス内で意見対立

ウォール街出身高官らが猛反対

 核・ミサイル実験を繰り返す北朝鮮に対し、トランプ米政権は追加制裁を行うなど「最大限の圧力」を続けている。だが、北朝鮮と取引を続ける中国の大手銀行に対する「セカンダリー・サンクション」(2次的制裁)についてはホワイトハウス内で意見が分かれている。中国の金融機関を制裁対象に加えれば経済的な影響が米国に及ぶと懸念するウォール街(米金融街)出身の政府高官らの声が強まり、トランプ大統領も制裁を「ためらうようになっている」(ワシントン・タイムズ紙)という。(ワシントン・岩城喜之)

トランプ氏

11月20日、閣議の冒頭で北朝鮮をテロ支援国に再指定したと発表するトランプ米大統領(中央)=UPI

 「きょう中に北朝鮮に対して大規模な追加制裁を科す。この状況を何とかする」

 トランプ氏は先月29日、北朝鮮の新型大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」発射を受け、ツイッターにこう書き込んだ。

 米メディアによると、この時には北朝鮮への追加制裁のほか、北朝鮮の不正取引に関与した疑いがある中国の金融機関に対する2次的制裁も検討されていた。

 ティラーソン国務長官も「われわれには追加制裁の長いリストがあり、その中には金融機関も含まれている。準備が整えば、財務省が発表する」と記者団に説明し、中国の銀行に対する制裁を示唆したが、結果的に同日中の追加制裁は見送られた。

 中国内には国有銀行をはじめ、今も北朝鮮と取引を続ける銀行が多い。北朝鮮の核・ミサイル開発の資金源を完全に断つためには「中国の大手銀行に制裁を科す必要がある」(米メディア)が、トランプ政権は6月下旬に丹東銀行(遼寧省)を制裁対象に指定して以来、半年近く金融機関への制裁を発表していない。

 ワシントン・タイムズ紙によると、トランプ政権の中には、中国が北朝鮮への影響力を行使しないことに不満を持ち、大手銀行に対する2次的制裁を求める意見がある一方で、国有銀行が制裁対象に指定されれば、中国のみならず米国経済にも大きなダメージになると危惧するウォール街出身者らも存在する。

 中でも制裁に強く反対しているのが、中国に巨額の投資を行っている米金融大手ゴールドマン・サックスの社長を務めたコーン国家経済会議(NEC)委員長だという。

 米メディアによると、中国の銀行に対する制裁を強く求めていたスティーブ・バノン前大統領首席戦略官・上級顧問やセバスチャン・ゴルカ元大統領副補佐官が政権を離れたこともあり、対中政策でウォール街出身者の影響力が強まり、金融機関に対する制裁にストップがかかるようになった。

 一方、議会では大手銀行を制裁対象に加えるよう求める声が高まっている。エド・ロイス下院外交委員長は、中国最大の国有銀行、中国工商銀行など大手銀行12社への2次的制裁を主張。米上院銀行委員会も先月7日、北朝鮮と取引のある金融機関などに制裁を科すことを米政府に求める法案を全会一致で可決した。

 提出者の共和党パット・トゥーミー上院議員と民主党クリス・バンホーレン上院議員はCNNテレビ(電子版)への寄稿で、法案は中国やマレーシアの銀行を想定していると説明し、「北朝鮮の核兵器による攻撃を防ぐために、米国はすべての経済的な手段を取る必要がある」と強調。「厳しい2次的制裁こそが最終的に中国を動かすことになると信じている」と主張し、中国の金融機関に対して制裁を拡大するよう訴えた。