トランプ米政権半年、低支持率ながら強固な基盤
軽率な言動で混乱も
トランプ米大統領が就任してから20日で半年。メディアからの厳しい批判はやまず、支持率も低い状態が続いているが、白人労働者層からは今も根強い支持を集めている。一方で、トランプ氏の軽率な言動が混乱を招く場面も多くあり、今後はいかに大統領らしく振る舞えるかが問われることになる。(ワシントン・岩城喜之)
ワシントン・ポスト紙とABCテレビが16日に発表した世論調査によると、トランプ氏の支持率は就任後半年の大統領としては第2次大戦後で最低の36%だった。トランプ氏は「この時期に(支持率が)約40%なのは悪くない。ワシントン・ポストとABCの世論調査は大統領選で最も不正確だった」とツイッターに書き込んで強気の姿勢を示したが、支持率が劇的に上昇する気配は見られない。
ただ、昨年の大統領選勝利の原動力となった白人労働者やキリスト教保守派の間でトランプ離れがあまり進んでいないことは大きな強みだ。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙が今月8~12日に行った調査によると、トランプ氏が大統領選で勝利した郡では「大統領の仕事ぶりを支持する」と答えた人は50%で、「支持しない」の46%を上回っていた。1カ月前の調査では「支持する」が40%だったことから、むしろ強固な地盤ではトランプ氏を評価する声が高まっていると言える。
こうしたことからトランプ氏周辺は、反トランプ運動がいくら勢いづこうが、根強い支持がある限り、低空飛行ながらも政権基盤は揺るがないとみている。
一方、トランプ氏の問題は自身の軽率な行動やツイッターへの書き込みが混乱を引き起こしているという自覚に乏しいことだ。
ロシアの米大統領選介入疑惑をめぐってコミー前連邦捜査局(FBI)長官を任期途中で解任した時には、結果的に疑惑を深めただけで、政策を論議するような雰囲気も失われてしまった。
また就任後初外遊となったサウジアラビアの首都リヤドで行った演説では、イスラム諸国と連帯してテロに立ち向かう「トランプ・ドクトリン」を示して高い評価を集めたものの、数日後に開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議では記念撮影の際にモンテネグロのマルコビッチ首相を押しのける姿がクローズアップされるなど、つまらない行動で否定的な話題一色になってしまうこともしばしばあった。
こうしたトランプ氏の言動について、WSJ紙は「物議を醸すことは、(政権が取り組むべき)政策課題に関心が向かなくなる危険がある」と指摘。共和党内からもトランプ氏に自制を求める声が出始めている。
また、各省の人事に大幅な遅れが目立つこともトランプ政権の大きな懸案事項となっている。新政権が政治任用する次官などの主要ポストは約550あるが、今のところ承認されているのは50人程度だ。
政権の方向性が定まらず、「政府の体を成していないように見える」(米メディア)のも、こうしたポストの空席が続いていることが大きな原因と言える。
人事が遅れているのは、トランプ政権入りすることが自身のキャリアにとってプラスにならないと考え、指名を受ける人が少ないことが一因とみられている。クシュナー上級顧問を中心とするグループとバノン首席戦略官・上級顧問のグループがホワイトハウス内で対立し、一方が起用しようとした人物をもう一方が拒否するようなことも起こっている。
ただ、トランプ政権に指名された人事の承認を、民主党がわざと遅らせる戦略を取っていることが大きな原因だと指摘する米メディアも少なくない。
ワシントン・ポスト紙によると、13日の時点でトランプ政権は主要ポストのうち200人以上を指名しているが、上院で承認されたのはその4分の1に満たない。さらに国務省の人事は先月末の時点で8人しか承認されておらず、トランプ政権に対してかたくなに反対姿勢を貫く民主党の態度が外交の足かせになっているとの批判もある。
米メディアによると今後は人事の承認も進んでいく見通しだが、民主党が反対姿勢を強める可能性もあり、政権運営を軌道に乗せられるかは、なおも不透明な状態にある。