過激化する反トランプ運動

共和党議員への銃撃招いたと批判も

 反トランプ陣営の行動が過激化している。米首都近郊バージニア州アレクサンドリアの野球場で共和党のスティーブ・スカリス下院院内幹事らが銃撃された事件も、そうした風潮が招いたとの見方があり、民主党議員らに暴力を助長するような言動を控えるよう求める声が出ている。(ワシントン・岩城喜之)

生首人形の動画や暗殺劇
偏向報道で憎悪あおるメディア

 「トランプ(大統領)はわが国の民主主義を破壊した。今度はトランプと仲間を破壊する時だ」

 スカリス氏を銃撃した犯人で警察官に撃たれ死亡したジェームズ・ホジキンソン容疑者は3月22日に自身のフェイスブックにこう書き込んでいた。

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14日、米バージニア州の銃撃現場を捜査する連邦捜査局(FBI)の捜査官ら(UPI)

 殺害予告とも取れる内容だが、この他にもホジキンソン容疑者はソーシャルメディアや新聞社にトランプ氏や共和党への憎悪をつづった内容を幾度となく投稿していた。

 ただ、このような書き込みは同容疑者だけが特別なわけではなく、インターネット上にはトランプ氏への敵意をあらわにした投稿があふれている。

 こうした風潮に、保守派のラジオ番組司会者マーク・レビン氏は「左翼の暴力性が増しており、ますます危険な状態になっている」と懸念を示す。

 一方、トランプ氏の殺害を思わせる画像や動画を躊躇(ちゅうちょ)なく公開する著名人も多く出ている。

 女性お笑い芸人のキャシー・グリフィン氏は先月末、血まみれになったトランプ氏とみられる人形の生首を持つ画像や動画を公開した。これには多くの批判が殺到し、トランプ氏の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏も「彼らはこれが受け入れられると考えているのか。保守派がオバマ前大統領にこのようなことをしたことがあったか」と非難。グリフィン氏は「一線を越えてしまった。心からおわびしたい」と謝罪したが、CNNテレビの年末恒例特番から降板させられた。

 また歌手のスヌープ・ドック氏はトランプ氏に扮(ふん)した人物を銃撃するミュージック・ビデオを製作し、物議を醸した。芸術団体「パブリック・シアター」も、主催する舞台「ジュリアス・シーザー」でトランプ氏を思わせる格好の主人公が暗殺されるという内容の公演を続けており、トランプ支持者の抗議を受けている。

 こうした「異常とも言える表現」(米メディア)が増えているのは、トランプ氏が相手なら何をやってもいいとの風潮が強まっているためだ。

 そうした空気は民主党やメディアによって、つくり出されたとの指摘は多い。

 ワシントン・タイムズ紙は「民主党はスカリス氏への銃撃に直接関与していない」としながらも、民主党議員のトランプ氏に対する憎悪に満ちた発言などが、「正式に選ばれた大統領を破壊しようとする過激な運動の風潮をつくった」と指摘した。

 レーガン元大統領のスピーチライターを務めたウォール・ストリート・ジャーナル紙のコラムニスト、ペギー・ヌーナン氏も「メディアは挑発的で憎悪をあおっている」とし、偏向した報道がトランプ氏への怒りを増幅させ、過激な行動へと駆り立てる原因になっているとの見方を示した。

 また民主党議員のトランプ氏に対する敵対的な発言は、直接的な危害を加えることへの抵抗感を少なくしているとの指摘もある。

 ロドニー・デービス下院議員は「憎しみに満ちた政治的な発言や講演が銃撃を招いた」とし、民主党議員に銃撃事件の責任の一端があると主張。これ以上負傷者を出さないよう、暴力をあおるような発言を控えるよう求めている。