改革期待する米国民、成否は共和党との関係次第

トランプ政権始動(2)

 米国社会の「分断」を抱えたまま船出するトランプ大統領の政権運営は、厳しいものになる――。米メディアのみならず、日本でもこうした声は多い。各種世論調査の支持率は40%前後で、就任直前の大統領としては最も低い数字だと聞けば、悲観的な見方が広がるのは当然だろう。

 だが、必ずしも支持率と政権の安定がリンクしていると言い切れないところが、これまでの政権と型破りなトランプ政権の大きな違いだ。

 実は、低い支持率とは裏腹にトランプ氏がワシントンの改革を進めることに期待する国民は多い。

 米CBSテレビが約1カ月前に発表した世論調査では、「トランプ氏がワシントンに本当の改革をもたらす」とした回答は62%だった。これは2008年にオバマ前大統領が当選した直後の64%とほぼ同じ数字だ。

 つまり、米国民はトランプ氏の大統領としての資質を疑問視する一方で、政治改革には期待するという「パラドックスを抱えている」(米紙ウォール・ストリート・ジャーナル=WSJ)状態にあるのだ。

 「あまりに長い間、首都の少数グループが政府の恩恵を受けてきた一方で、その代償を国民が負担してきた。ワシントンは繁栄したが、人々はその富の分け前にあずからなかった」。トランプ氏は就任演説で、このようにエスタブリッシュメント(既成勢力)を痛烈に批判した。

 米国民の既成政治に対する不信感は根強い。公職経験がない異色の候補だったトランプ氏が大統領選で勝利したことは、現状打破ができる人物だと考えた有権者が多くいた結果といえる。

 元米政府監査院(GAO)院長のデビッド・ウォーカー氏はワシントン・タイムズ紙への寄稿で、「米国民は大統領選で現状への不満とワシントン政治の変化を明確に表明した」と指摘。その上で「トランプ政権と議会、共和党が協力すれば、(政治改革を)進められる」と強調する。

 上下両院で過半数を握る共和党も、新政権誕生を「国民のために大きな政策を大胆に実現する機会」(ポール・ライアン下院議長)と捉え、トランプ氏と協力していく構えだ。

 ただ、トランプ政権には「不確実性」が付きまとう。共和党議員からの些細(ささい)な指摘に対し、トランプ氏が強く反発して全面的な対立関係に陥ることも考えられる。大統領選中は、そうした場面が繰り返されてきたからだ。

 その意味で、ホワイトハウス入りする高官の中で数少ない党主流派であるラインス・プリーバス大統領首席補佐官の存在がカギになりそうだ。

 プリーバス氏は、大統領選終盤にトランプ氏の女性蔑視発言が明らかになり党内部から激しく批判された際にも、一貫してトランプ氏の集会に参加し、共和党とトランプ氏の間を取り持ってきた。今後も両者の橋渡しという重要な役割を担うことになる。

 トランプ政権の成否は共和党との関係に懸かっている。WSJ紙はそうした見方を示した上で、次のように指摘する。

 「トランプ氏が共和党と協力し、目的を共有できれば、最初の2年をレーガン政権の1期目以来、最も特筆すべき期間にできるだろう」

(ワシントン・岩城喜之)