米上院公聴会 「ロシアは主要な脅威」


トランプ氏と閣僚候補、対露外交で食い違い

 トランプ次期米大統領が国防長官に指名したジェームズ・マティス元中央軍司令官は12日、上院軍事委員会の公聴会で「ロシアは米国の主要な脅威だ」と強調し、警戒感を鮮明にした。次期米中央情報局(CIA)長官に指名されたマイク・ポンペオ下院議員も同日、上院情報特別委員会の公聴会でロシアへの警戒感をあらわにするなど、ロシアとの関係改善を訴えるトランプ氏との違いが浮き彫りになった。

マティス

12日、米ワシントンの上院公聴会で証言する、国防長官に指名されたマティス元中央軍司令官(AFP=時事)

 マティス氏は公聴会で「ロシアと対抗しなければならない分野が増えている」と指摘。「関係改善は支持する」としながらも、「ロシアが何をしようとしているのか認識する必要がある」と述べ、同盟国と協力してロシアに対応する必要があるとした。

 またマティス氏は、ロシアや中国、テロ組織によって「国際秩序が第2次世界大戦後、最大の攻撃にさらされている」と主張。「(ロシアの)プーチン大統領は北大西洋条約機構(NATO)を破壊しようとしている」と述べ、今後もNATOに深く関わっていく必要があるとの認識を示した。

 さらにマティス氏は「アジア太平洋地域の軍事的な態勢を維持すべきだ」とし、アジア重視の方針を続ける考えを示した。

 一方、CIA長官に指名されているポンペオ氏は、大統領選を狙ったサイバー攻撃について「ロシア指導層による攻撃的行為だ」と強く批判。過激派組織「イスラム国」(IS)掃討についても「ロシアは、ほとんど何もしていない」と述べ、ロシアとの協力を訴えるトランプ氏の方針に疑問を呈した。

 ロシアをめぐっては、国務長官に指名されているレックス・ティラーソン氏も11日に行われた上院外交委員会の公聴会で「脅威となりうる」などと批判していた。

 こうした閣僚級の相次ぐロシア脅威論に、関係改善を訴えてきた次期政権の対ロ政策が変わる可能性があるとの見方も出ている。

(ワシントン岩城喜之)