トランプ氏、福音派の支持を期待
2016米大統領選
米共和党の主要な支持基盤であるキリスト教保守派の年次集会「バリューズ・ボーター・サミット」が8日から4日間、ワシントン市内で開催された。大統領選では保守派の動員が勝敗を左右することもあるため、共和党候補ドナルド・トランプ氏も集会に参加し、積極的に「保守層への売り込み」(米メディア)を図った。(ワシントン・岩城喜之、写真も)
激戦州での勝敗にも影響
「トランプ政権は、これまでに見たことがないほどキリスト教の文化を大切にし、保護する」「私は家庭の価値観のために戦う」――。集会2日目に登壇したトランプ氏は、このように「宗教票」を強く意識したメッセージを繰り返した。特に陣営が注目しているのが米人口の4分の1を占めるとされるキリスト教福音派の行方だ。
福音派は2000年と04年の大統領選でブッシュ前大統領が当選した際に大きな原動力となった。
一方で、08年と12年の大統領選では党候補が穏健なスタンスだったことから支持を固めきれず、動員力が大きく落ちたと指摘されている。このため、いかに福音派票を掘り起こして支持を固められるかが共和党候補の重要な選挙戦略になっている。
トランプ氏は集会で、教会など非課税の団体・組織が特定の選挙候補者への支持表明を禁止した「ジョンソン修正法」の廃止を提案。「すべての宗教指導者は自由に自分の考えを表現できなければならない」と主張した。米メディアによると同修正法の撤廃を掲げた大統領候補は初めてで、政治的な言動が一部制限されている宗教家たちを喜ばせた。
これまで福音派は、2度の離婚歴があることや過去に人工妊娠中絶を容認する立場を示していたトランプ氏に強い不信感を抱いてきた。3月に保守派団体がワシントン郊外で開いた集会は「反トランプ」の様相を呈し、直前になってトランプ氏が参加を取りやめるほど溝が深かった。
ただ、トランプ氏は党指名の獲得が確実になった頃から福音派指導者たちと積極的に会合を開くなど耳を傾ける姿勢を示してきた。
こうした努力が奏功し、現在では福音派の多くがトランプ支持でまとまりつつある。今回の集会を主催した「家庭調査協議会」のトニー・パーキンス会長は「予備選で福音派の多くがテッド・クルーズ氏に投票したが、今は75%がトランプ氏を支持している」と強調する。
3月の集会でトランプ氏への抗議行動を計画するなど「反トランプ」の急先鋒(せんぽう)だったウィリアム・テンプル氏(66)もトランプ支持に転じた一人だ。テンプル氏は本紙の取材に「社会問題でリベラル色の強い(民主党候補)ヒラリー・クリントン氏が大統領になれば信教の自由が今以上に脅かされることになる」と強調。支持を変えた理由について「トランプ氏は積極的に保守派の声を聞こうとしているからだ」と説明した。
福音派の動向は激戦州での戦いに大きな影響を及ぼすため、陣営は期待を寄せている。ただ、トランプ氏はまだ完全に支持を固めきれておらず、今後どれだけ福音派票を取り込めるかが選挙戦のカギになりそうだ。






