トランプ氏「国境に壁」強調
移民政策で強硬姿勢崩さず
米大統領選の共和党候補ドナルド・トランプ氏は31日、西部アリゾナ州で不法移民政策に焦点を当てた演説を行った。この中でトランプ氏は、メキシコとの国境沿いに「強固な壁を建設する」と訴えたほか、大統領の就任初日に犯罪歴のある不法移民を強制送還すると主張するなど、10項目にわたる移民対策を発表した。
トランプ氏は、一定の条件を満たした不法移民が就労できるとしたオバマ政権の大統領令による政策を廃止すると言明。「不法に米国に入国しても法的地位は得られないし、市民権も与えられない」と語った。また、シリアやリビアなど身元審査が適切に実施できない国からの移民受け入れも中断するとした。壁建設の費用についてはメキシコに支払わせる考えを改めて強調した。
トランプ氏は移民政策で立場を軟化させる可能性を一時示していた。このため、不法移民に関する演説で何を話すか注目されていたが、強硬姿勢を変えることはなかった。
一方、演説に先立ちトランプ氏はメキシコを訪問し、ペニャニエト大統領と会談した。約1時間行われた会談では、トランプ氏が不法移民対策として両国の国境に壁を建設する権利を主張したほか、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉が必要だとの立場を伝えた。
トランプ氏は会談後の共同記者会見で「どちらの国にも国境に物理的な障壁や壁を築く権利があると認め、尊重する」と主張した。ただ、壁建設の費用については「誰が支払うか協議しなかった」と述べた。これに対して、ペニャニエト大統領は会見後にツイッターで「会談の冒頭で、メキシコが壁の費用を支払わないことを明確にした」と明らかにするなど、両者の主張に食い違いがみられた。
またペニャニエト大統領は、トランプ氏がこれまでに「メキシコ人は米国に麻薬や犯罪を持ち込む」などと発言してきたことについて「メキシコ国民は感情を害された」と強調。その一方で、誰が米大統領になっても協力関係を続けていくとの考えを表明した。
会談はペニャニエト大統領がトランプ氏を招待したことで行われた。トランプ氏が大統領候補として外国首脳と会ったのは初めてで、周辺国と良好な関係を築ける姿を見せることで、「リーダーにふさわしい候補をアピールする目的があった」(CNNテレビ)とみられている。
(ワシントン岩城喜之)











