南米初開催の夏季五輪に思う
地球だより
南米初開催の夏季五輪となったリオデジャネイロ五輪が成功裏に幕を閉じた(パラリンピックは今月開催)。
開催国のブラジルでは、スポーツ報道の多くがサッカーに割かれるが、五輪開催を通じて得意とするバレーや柔道だけではなく、陸上、ピストルやカヌーなど多くのスポーツに国民、特に子供たちの関心が集まった。記者の次女が通うブラジルの中学校においても、米水泳代表のマイケル・フェルプスやジャマイカ陸上代表のウサイン・ボルト選手などが話題となり、子供たちがテレビの前に釘(くぎ)付けになった。
ブラジルでは、主に予算の関係から日本のように多岐に渡る課外活動はなく、国技とも言えるサッカー以外のスポーツを経験することが少ない。五輪は、そうした子供たちにスポーツの楽しみや醍醐味(だいごみ)を伝える機会となった。
一方、リオ五輪でのブラジル初の金メダルは、スラム街出身の女性柔道選手ラファエラ・シルバが手にした。肌の色などから差別も受けたが、多くの障害を乗り越えての金メダルは情にもろいブラジル人の涙を誘った。
リオのスラムには、NGO団体が運営する柔道場がある。犯罪に走りやすい環境にあっても、柔道を通じて子供たちに未来への選択肢を与えようという試みだ。そのスラム街の柔道場に、五輪選手村に入ったばかりのフランスの柔道代表団が訪問し、子供たちと交流した。人生を懸けた試合の前に、このような交流を行うフランス代表選手たちの姿に、フランスが持つスポーツ文化の懐の深さと五輪精神の一片を感じた。
(S)