米国防予算 対中国抑止を最優先
AI・極超音速 先端技術に投資
バイデン米政権は28日、2022会計年度(21年10月~22年9月)の国防総省予算として、7150億㌦(約78兆5000億円)を要求した。急速に軍拡を進める中国に対抗するため、人工知能(AI)や極超音速兵器などの先端技術への研究開発費を増加させるほか、アジア太平洋地域での抑止力向上を図る。
国防総省のヒックス副長官は記者会見で、中国が「米国の国益に挑戦する経済、軍事、技術的能力を持っている」と指摘。「予算要求は、中国に対する明確なアプローチを取り、対中国を最優先にして投資を行うものだ」と説明した。
具体的には、先端技術の研究開発に前年度比5・1%増となる過去最大の1120億㌦を計上。アジア太平洋地域で中国に対抗するため、地上発射型中距離ミサイルやレーダーシステムなどを配備する「太平洋抑止イニシアチブ」に51億㌦を配分し、前年度の22億㌦から大幅に増加させた。
また、最新鋭ステルス戦闘機F35を85機調達。海軍ではバージニア級原子力潜水艦2隻のほか、水上戦闘艦8隻の建造を要求。トランプ前政権下では22会計年度に水上戦闘艦12隻を求めていた。一方、アフガニスタンからの全面撤収などを受け、陸軍の予算は削減した。
核抑止力を維持するための核兵器近代化に277億㌦を計上。また、19年に創設された宇宙軍への資金は20億㌦増加して174億㌦とした。
国防総省予算にエネルギー省の核兵器維持管理費などを加えた国防関連予算は前年度比1・7%増の7530億㌦となった。ただ、インフレ調整後の予算規模は微減となることから、野党・共和党議員などからは予算不足との批判も出ている。
上下院の軍事委員会で共和党トップのインホフ上院議員とロジャース下院議員は共同声明で「この予算は、中国などの敵対国に、米国自身や同盟・友好国を守るために必要なことをする気がないという悪いシグナルを送ることになる」と指摘した。
(ワシントン・山崎洋介)