武漢研究所 流出説が再燃、米大統領 追加調査を指示
バイデン米大統領は26日、新型コロナウイルスの起源について、中国の武漢ウイルス研究所からの流出説を含め情報機関に追加調査するよう命じた。米国では、同研究所から流出した可能性について、議論が再燃している。
バイデン氏は、同日発表した声明で、情報機関は、新型コロナが感染した動物と人間の接触によって発生した説と研究所からの流出説の「二つのもっともらしいシナリオ」をまとめたと表明。情報機関のうち「二つは前者のシナリオに傾いており、一つが後者に傾いている」としたが、ほとんどの機関が分析するための十分な情報がないと考えていると説明した。
その上で、米国は、各国と協力し「中国に対し完全で透明性のある証拠に基づく国際調査に参加するとともに、関連するすべてのデータと証拠へのアクセスを認めるよう圧力をかける」とも表明した。
新型コロナの起源をめぐっては、世界保健機関(WHO)が3月、中国に派遣した調査団の報告書で、動物から中間宿主を通じて人に感染したとの仮説が最も有力とし、研究所からの流出説について「極めて可能性が低い」とほぼ否定。これに対し、日米など14カ国が声明で「完全な元データや検体へのアクセスが欠如していた」などとし、追加調査を求めていた。
トランプ前大統領をはじめ前政権高官らが主張してきた研究所流出説への注目が高まっている。23日には、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が、中国の武漢ウイルス研究所の研究者3人が2019年11月に体調不良となり、病院で治療を受けていたことが米情報機関の報告書で明らかになったと報じた。
新型コロナ発生から1年以上たっても、自然発生説を裏付ける根拠がほとんど見つかっていないことも背景にある。ファウチ国立アレルギー感染症研究所所長は今月、自然発生したことに「確証を持っていない」と表明。科学的証拠が自然発生説に「非常に強く傾いている」と主張していた従来の立場を転換させた。
14日には、ハーバード大教授ら18人の著名な科学者が、研究所からの偶発的な流出の可能性もあると指摘する書簡をサイエンス誌に発表した。
(ワシントン・山崎洋介)