新型コロナ起源、中国軍の生物兵器開発か 元米国務省幹部指摘
19年秋、研究者らに症状
トランプ前米政権で新型コロナウイルスの起源を調査するタスクフォースを率いたデービッド・アッシャー元国務省調査官はこのほど、同ウイルスについて、中国人民解放軍が生物兵器を開発する過程で、武漢ウイルス研究所(WIV)から流出した可能性があるとの見方を示した。世界で260万人以上が犠牲となった新型コロナの起源は依然として不明だが、こうした可能性を含め徹底した調査が求められる。
現在米シンクタンク、ハドソン研究所の上級研究員であるアッシャー氏は12日に同研究所が主催するオンラインセミナーで、新型コロナの起源について、WIVで「兵器として開発段階のウイルスが、意図せずに何らかの形で流出した可能性がある」と主張。その場合、「歴史上で最強の兵器だったことになる」と語った。
前政権下の1月に国務省が公表した報告書によると、中国・武漢で最初に新型コロナ感染者が見つかったとされる前の2019年秋に、WIVで数人の研究者が新型コロナに近い症状を示した。アッシャー氏はこれについて「3人が重い症状で同じ週に入院した」とし、新型コロナが「間違いなく研究所内から広まったように思える」との見解を示した。
また同報告書は、遅くとも17年には人民解放軍がWIVに研究資金を提供し、動物実験を含む極秘の研究を行っていたと指摘。アッシャー氏はFOXニュースに「私の見解では、これは生物兵器開発プログラムだった」との認識を示した。
アッシャー氏は以前、国務省でパキスタンの核科学者カーン博士を中心とした「核の闇市場」の実態解明を指揮したことで知られる。また、重症急性呼吸器症候群(SARS)が流行した03年には同省の代表として中国政府に対応した。
アッシャー氏によると、WIVで軍の資金提供による秘密研究が開始されたのと同時期に、中国が兵器としても使用できるコロナウイルスの研究について公表することをやめたという。同氏は同セミナーで「それは偶然だとは思えない」と語り、その頃から生物兵器開発のための研究が開始された可能性を指摘した。
アッシャー氏はさらに、中国の軍事評論家が16年、中国の国営メディアで、同国が「ウイルスを含む生物戦争の領域に突入した」と語っていたと強調。生物兵器の開発が「習近平国家主席の国家安全保障政策の下での新たな優先事項であった」とも付け加えた。
ポンペオ前国務長官の中国政策補佐官を務めたマイルス・ユー(中国名・余茂春)氏は同セミナーで、「中国のバイオセーフティー基準は非常に低く、いつ事故が起きてもおかしくなかった」と指摘。さらに「中国はウイルスの起源について正確に知っていたが、それを隠そうと努めた。それは、生物兵器かその他の危険な研究を行っていたことが理由の可能性がある」と主張した。
新型コロナの発生源をめぐっては、世界保健機関(WHO)調査団が先月、ウイルスが中国・武漢の研究所から流出した可能性は「極めて小さい」との見解を表明。サリバン米大統領補佐官はその手法に「深い懸念と疑問」があるとし、中国政府に新型コロナ流行の初期データを開示を求めた。真相解明のため、国際社会は中国に圧力をかけ続けることが求められる。
(ワシントン 山崎洋介)