米国防総省 レアアース確保へ新工場
中国の独占阻止へ
米国防総省は、先進兵器や電子機器に欠かせないレアアース(希土類)市場の中国による独占を阻止するため、レアアース処理工場をテキサス州に建設することを発表した。
事業を請け負うのは、ライナス・レアアース社。建設計画は、国防生産法に基づいて2月1日に公表され、軽レアアースの処理を行う。
国防総省は事業の発表に際して、「(これらの元素は)防衛、商用にさまざまな用途があり、石油精製、ガラス添加物、電気自動車の駆動モーターに使用される磁石、精密誘導兵器などで使用される。計画が完成すれば、ライナスは、世界のレアアース酸化物のほぼ25%を生産できるようになる」ことを明らかにした。
オーストラリアとマレーシアの企業の米子会社であるライナスは、テキサス州ホンドに工場を建設、国防総省が3040万㌦を拠出する。オーストラリア、マレーシアでの業務を補完することになるという。
新工場は、4月に国防総省が建設を発表した重レアアース分離工場に併設される。
国防総省によると、これは、2017年の大統領令によるレアアースの安定した供給源を確保するための政府の戦略の一環。大統領令は、レアアースの供給を外国からの輸入に依存することは、軍と経済双方にとって「戦略的脆弱(ぜいじゃく)性」を生じさせるとしている。
レアアースの供給は現在、不足していない。しかし、ハイテク製品のためのレアアースは処理、精製が需要に追い付いていない。米国が輸入しているレアアースの約80%は中国製が占めている。
中国の習近平国家主席は19年にレアアース生産施設を訪問し、米国との貿易戦争での新たな「長征」を呼び掛けた。中国国営メディアは、米国へのレアアース輸出を遮断することも可能だと報じており、10年には実際に、日本との貿易をめぐる対立で輸出を規制したことがある。
国防総省はさらに、レアアースの備蓄を増やし、「防衛装備品のサプライチェーン(供給網)を転換し、レアアース磁石の供給源を中国以外に移す」新規則を推進している。ネオジム磁石に使用されるレアアースの米国内での増産が進められており、レアアース処理技術開発を加速する研究も実施されている。
ライナスは、中国に次ぐレアアース生産量を誇り、テキサス州の工場では年間約5000㌧が生産される。