黒人の命は大切、BLM運動に中国マネー


米国の混乱助長が狙いか

 米国で人種差別反対を訴える「黒人の命は大切(BLM)」運動の関連組織に、中国系団体から資金が提供されていることが分かった。5月に中西部ミネソタ州で起きた白人警官による黒人暴行死事件をきっかけに、BLM運動は全米各地で激しい抗議活動を巻き起こし、一部は暴動や略奪、放火など破壊行為に発展している。中国系団体は、マルクス主義者が主導するBLM運動を支援することで、米社会の混乱を助長することを狙っている可能性がある。(編集委員・早川俊行)

6月6日、米首都ワシントンで行われた人種差別抗議デモで掲げられた巨大な「黒人の命は大切(BLM)」の横断幕(UPI)

6月6日、米首都ワシントンで行われた人種差別抗議デモで掲げられた巨大な「黒人の命は大切(BLM)」の横断幕(UPI)

 中国系団体から資金提供を受けているのは、BLM運動の発起人の一人、アリシア・ガーザ氏が設立した「ブラック・フューチャーズ・ラボ(BFL)」という組織。この組織のウェブサイトには寄付金を募るページがあり、そこにBFLは「華人進歩会(CPA)」という在米中国人団体の資金援助を受けたプロジェクトだと明記されている。

 ガーザ氏ら3人の黒人女性が2013年に立ち上げたBLM運動は現在、米国内に15カ所、海外にもカナダ、豪州、欧州で支部が設立され、国際的な運動になっている。共同発起人のパトリッセ・カラーズ氏は15年のインタビューで、自身とガーザ氏は「訓練されたマルクス主義者」であると明言。ガーザ氏も同年のインタビューで、「資本主義の下では黒人の命は守られない。水と油のような関係だ」と述べ、資本主義の打倒が運動の目標であることを明らかにしている。

 BLM運動は人種差別反対を掲げて急速に支持を広げているが、マルクス主義者に操られているのが実態だ。全米各地に広がった抗議デモは、暴動や略奪、放火、歴史的人物の彫像・記念碑の破壊など暴力行為に発展するケースも多く、「暴力革命」の印象すら与えている。

 ガーザ氏の組織に資金を提供するCPAは、1972年にサンフランシスコで設立された親中派団体で、中国の革命思想の普及に取り組んできたとされる。CPAボストン支部は昨年、中国建国70周年を記念し、ボストン市庁舎前で中国国旗を掲揚するイベントを開催。イベントは在ニューヨーク中国総領事館と連携して行われており、中国政府と深いつながりを持っていることが分かる。

 CPAはBLM運動への支持を表明しており、6月10日の声明では、「われわれは中国系移民として、米国には人種差別と搾取が深く根付いていることを知っている」と、米国は人種差別国家であると非難した。中国政府も、香港の反政府デモを支持してきたトランプ政権がBLM抗議デモを抑え込もうとするのは「世界に名をはせる二重基準」と批判していた。

 CPAが中国共産党の指示でBLM関連組織に資金提供しているかどうかは不明だが、中国共産党にとって、米国内で共産主義革命を目指すBLMは利用価値の大きい運動であることは間違いない。他のBLM系組織にも、中国マネーが流れている可能性も考えられる。

 CPAとBLM関連組織のつながりを米メディアで最初に明らかにした保守系シンクタンク、ヘリテージ財団のマイク・ゴンザレス上級研究員は、米司法省に資金の流れを調査するよう求めている。ゴンザレス氏は、世界日報の取材に「中国はライバルである米国の社会を弱体化させることで有利になると考えているのだろう」と指摘した。