中国、10年で核弾頭倍増へ 米国防総省、年次報告で警戒


弾道ミサイル数は世界最多

 米国防総省は1日、中国の軍事・安全保障分野の動向に関する年次報告書を公表し、中国が保有する核弾頭の数を「200発台前半」と推計し、今後10年間で倍増すると警戒した。国防総省が中国の核弾頭数の推計を明らかにするのは初めて。

軍用車両で運ばれる中国の中距離弾道ミサイル「東風26」=2015年9月、北京(AFP時事)

軍用車両で運ばれる中国の中距離弾道ミサイル「東風26」=2015年9月、北京(AFP時事)

 報告書は「核戦力の拡大と近代化を進める中、中国は今後10年間で、核弾頭の保有数を少なくとも2倍に増やす」と予想。核弾頭が搭載可能な空中発射弾道ミサイル(ALBM)の開発や、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の能力向上を図ることで、米国が持つ「核の三本柱」を追求していると指摘した。

 国防総省のスブラギア次官補代理(中国担当)は、「中国が核兵器を全面的に増強させ、近代化や多様化を図っている」と強調。「中国は核戦力増強をやめ、核戦争の危険を減らす必要がある」として米露両国の核軍縮交渉に加わるよう呼び掛けた。スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(SIPRI)によると、米国は核弾頭を5800発、ロシアは6375発を保有している。

 報告書はまた、中国が艦艇数や地上発射型弾道・巡航ミサイル保有数、統合防空システムなどの分野で既に米国と同等か米国を上回っていると指摘。中国海軍は主要な水上戦闘艦130隻以上など艦船や潜水艦350隻を保有する「世界最大の海軍」だと強調。これに対し、米海軍の艦艇数は今年初頭で293隻にとどまっている。

 また中国が保有する射程500~5500㌔の地上発射型弾道・巡航ミサイルは1250基を超えると分析。昨年まで中距離核戦力(INF)全廃条約でこうしたミサイルの保有を禁じられてきた米国は現在、射程70~300㌔の地上発射型弾道ミサイルを1種類保有しているのみだとした。

 中でも米領グアムを射程に収める中距離弾道ミサイル「東風26」の配備数を増やしていると警戒感を示した。同ミサイルは、移動する大型艦艇に対する攻撃が可能とされ、「空母キラー」との別名もある。先月26日には中国大陸部から南シナ海に向けて発射実験が行われたとみられている。

 報告書ではさらに、米国を脅かすことのできる地上発射型のICBMの数は、今後5年で約200発を超えると予想。また、2019年に中国が実験と訓練のために発射した弾道ミサイルの数は、他国全ての合計を上回ったと指摘した。

(ワシントン 山崎洋介)