米海軍原子力艦艇、造船所の老朽化で整備に遅れ


 米海軍の原子力艦艇を支えている国有造船所の老朽化で、艦艇の整備が追い付かず、トランプ政権が進める中国など「列強との競争」に支障が出る可能性が指摘されている。

 保守系シンクタンク、ヘリテージ財団によると、海軍が保有する原子力船は、空母11隻、攻撃型原潜51隻、弾道・誘導ミサイル潜水艦が18隻。これらは、4カ所の国有造船所で整備されているが、修復・メンテナンス計画の未処理分が48億ドルあり、海軍は現在の能力維持に困難を来しているという。政府監査院(GAO)によると、未処理分の消化には20年かかる。

 海軍海洋システム軍のプログラムマネジャー、スティーブン・ラガナ氏は、「これらの造船所は、国防にとって欠くことはできない」とその重要性を指摘した。

 海軍の原子力船はすべて、この4カ所の造船所で整備が行われ、その他の艦艇は民間の造船所で行っている。

 だが、国有造船所では十分な業務をこなせておらず、乾ドックのスペースが足らず、施設、装備は古く、旧型だと防衛アナリストらは指摘する。

 ヘリテージ財団国防センターのアナリスト、マリヤ・クラーク氏は「米国の海軍造船所は危機に直面している。何十年間もの間、十分な投資が行われてこなかった。現在の海軍を維持し、変わりゆく海軍の要請にこたえる能力はない」と危機感をあらわにした。

 そのうちの一つ、ノーフォーク海軍造船所ができたのは独立前の253年前、南北戦争後に再建された。最も新しいハワイ真珠湾の造船所は1908年創業だ。

 海軍は第2次世界大戦時、11の造船所を運用していたが、95年までに7カ所が閉鎖された。

 さらに、90年代から2000年代にかけての海軍艦艇の削減で、造船所の労働者の雇用が減少したことから、熟練技術者も不足。クラーク氏は、「熟練労働者の大部分は引退し、残ったごくわずかの熟練労働者が大量の新人を教育している」という現状を指摘した。

 海軍は、18年5月に国有造船所の近代化のために、「造船所インフラ最適化計画」を作成した。乾ドックの修理、老朽化し、劣化した設備の交換、施設の再建に20年間で210億ドルを投入する。

 しかし、クラーク氏は、既存の造船所の整備だけでは、中国、ロシアなど新興の大国を抑え込むために必要な能力を海軍に持たせることは難しいと指摘する。

 同氏は、既存の造船所の能力を拡大する、民間の造船所に業務を委託するなどの可能性はあると指摘したものの、計画は具体化していない。

(ワシントン・タイムズ特約)