米議会 対中国で超党派の協力進まず
新型コロナウイルスをめぐり、トランプ米政権と共に共和党議員が中国への非難を強めているが、民主党議員は強硬姿勢から距離を置いている。大統領選が11月に迫る中、民主党は、中国問題よりもトランプ氏の新型コロナ対応の「失敗」に焦点を当てたい思惑が先行し、超党派の対応を妨げている。(ワシントン・山崎洋介)
大統領選控え党略が先行
民主党、トランプ氏のコロナ対応「失敗」主張
共和党のケビン・マッカーシー下院院内総務は7日、中国に関わる問題を調査する同党議員15人による「中国タスクフォース」の設立を発表した。この中で、米国内や国際機関における中国の影響工作などの問題を扱うほか、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、その起源や世界に拡散させた中国の責任についても取り上げるという。
当初、タスクフォースは2月に超党派で発足する予定だったが、その直前に民主党側が不参加を表明してきたという。マッカーシー氏は同日の会見で「彼らはもともとイエスと言っていたが、数カ月前にノーと言ってきた」と不満をあらわにした。
米メディアによると、民主党が2月に参加を見合わせた理由は、誰をメンバーにするかをめぐって党内で調整が難航したからだった。しかし、その後も参加を拒んだのは、新型コロナ対応をめぐってトランプ政権に対する批判が高まる中、中国の責任に焦点が当たることで、トランプ氏の「失敗」から有権者の関心がそれることを警戒しているためだ。
民主党のアダム・シフ下院議員は、タスクフォースに参加しない理由について、「マッカーシー氏の念頭にあるのは、これを政治的に利用し、大統領選挙で用いることだ」と述べ、中国に矛先を向けることで責任を回避しようとしていると指摘。一方で、「実際には、民主党がこのテーマについて主導してきた。われわれは1年半の間、中国について深く調査してきた」と主張した。
新型コロナの対応でトランプ氏に対する世論の支持は低迷している。最近のFOXニュースの世論調査では、パンデミックへの対応で、トランプ氏を信頼できると答えた人が37%で、46%だった民主党のバイデン前副大統領の後塵(こうじん)を拝した。
民主党としては、中国に対して米世論が硬化する中、中国問題への取り組みをアピールする必要があるものの、トランプ氏の「責任転嫁」に手を貸すことは避けたいとの考えがある。
一方、共和党側は超党派での取り組みに後ろ向きな姿勢を批判。スティーブ・スカリーズ下院院内幹事は 「何らかの理由で、ペロシ下院議長は中国に立ち向かうことを望んでいない。民主党は中国共産党を庇(かば)っている」と難じた。
最近、トランプ氏はツイッターで「中国の無能さ」が「世界規模の大量殺人」につながったなどと非難。中国に対する経済的報復や断交も示唆するなど、批判のトーンを強めている。
共和党議員はトランプ政権の強硬姿勢と歩調を合わせ、中国政府への損害賠償を可能にする法案などを相次いで提出。中国タスクフォースのメンバーでもあるジム・バンクス下院議員は、新型コロナの影響で経営難に陥る米国企業に中国政府が投資することを困難にする法案を提出している。
しかし、民主党は、こうした立場とは一線を画したままだ。デビッド・シシリン下院議員は「中国の透明性について深刻な問題があることは間違いない」としつつも、トランプ氏の中国批判は「ある国に責任を押し付け、自分の失敗から関心をそらす傾向の一つだ」と指摘した。
新型コロナをめぐり米中対立が先鋭化する中、議会でも超党派で対応することが望まれる。しかし、選挙を控え、中国問題をめぐって与野党の協力が進まない状況となっている。