米軍コロナ拡大、日米は中国への警戒強化を
アジア太平洋地域で活動する米海軍空母で新型コロナウイルスの感染が発生し、米軍の展開能力が削(そ)がれる中、中国軍による挑発的な動きが増えている。
感染拡大が続く中であるが、日米両国は中国に対する警戒を強化すべきだ。
全世界への展開に支障
米空母「セオドア・ルーズベルト」は先月、フィリピン海に展開中、乗組員3人が新型コロナの検査で陽性反応を示した。その後、約600人の感染者が確認されて死者も出た。現在は米領グアムで停留を余儀なくされている。
これまで米空母11隻のうち、横須賀基地(神奈川県横須賀市)を母港とする「ロナルド・レーガン」など計4隻の乗組員から陽性反応が出た。米軍の全世界への展開に支障を来すため、日米などの安全保障体制が揺らぐことが懸念される。
一方、中国はこうした米軍の隙を突くような行動を繰り返している。中国軍の戦闘機や爆撃機が台湾の周辺を飛行したほか、南シナ海の南沙(英語名スプラトリー)諸島に先月、「科学研究」施設を設置するなど、覇権拡大の動きが目立つ。西沙(英語名パラセル)諸島付近では、中国公船がベトナム漁船に追突し沈没させた。
日本周辺でも、中国軍の空母「遼寧」など6隻が沖縄本島と宮古島の間を通過し、南シナ海で訓練を実施。沖縄県・尖閣諸島周辺海域では中国公船が活動を活発化させ、今月は領海侵入を既に2回行った。
中国は新型コロナの発生源であり、本来であれば初動の遅れで世界に感染を拡大させた責任を取るべき立場だ。それにもかかわらず、中国は謝罪するどころか、外務省のスポークスマンが「ウイルスを持ち込んだのは米軍かもしれない」とツイッターに書き込むなど責任逃れの姿勢が目立つ。
ましてや米空母での集団感染発生をいいことに、地域の安全を脅かすような行動に出ることは決して容認できない。特に、この機に乗じて南シナ海の不法な支配を強めることは言語道断である。
海上自衛隊の護衛艦「あけぼの」は今月、東シナ海で米強襲揚陸艦「アメリカ」と共同訓練を行った。島嶼(とうしょ)奪還作戦にも使われる強襲揚陸艦が参加したのは、尖閣などの離島を念頭に置いたものだろう。新型コロナ感染拡大の中でも可能な演習は実施すべきだ。
日米が抑止力を維持し、中国を牽制(けんせい)するには、何よりも新型コロナを早期に収束させることが求められる。各国はワクチン開発を急いでほしい。
自主防衛力を高めよ
こうした中、米太平洋空軍は中国や北朝鮮に対する抑止力の一環としてグアムに交代で配備していた戦略爆撃機について、今後は米本土からの運用に切り替えることを明らかにした。太平洋空軍は「戦略爆撃機は今後もインド太平洋地域で運用される」と強調するが、中国がさらに強硬な姿勢を示すことが憂慮される。
日本は日米同盟の一層の強化と共に、同盟の中での日本の役割を拡大し、自主防衛力を高めていくことが求められよう。