モルシ前エジプト大統領が死去


出廷中に倒れて搬送

 エジプトのムハンマド・モルシ前大統領が17日、首都カイロの法廷で出廷中に倒れ、緊急搬送され先の病院で死亡が確認された。67歳だった。地元メディアが検察の発表として報じたところによると、死因は突然の心臓発作という。

ムハンマド・モルシ前大統領

エジプトのモルシ元大統領(EPA時事)

 各国にイスラム法を適用させることによって「全世界のイスラム化」を目指すイスラム主義組織「ムスリム同胞団」出身のモルシ氏は、2010年暮れからチュニジアを皮切りに、「独裁政権打倒・民主主義の確立」を求めて若者中心に始まった中東地域の民主化運動「アラブの春」を、エジプトで団員と共に最大限に利用、組織力を生かして12年、ムバラク元大統領退陣後の大統領選に勝利し、大統領に就任した。

 しかし、政権運営が初めてだったことに加えて、同胞団に反発する官僚らが抵抗。また、停電や断水の日常化、治安の悪化など社会不安が増した。決定的だったことは、ムスリム同胞団を母体とするパレスチナ自治区ガザを武力支配中のイスラム過激派組織「ハマス」を支援するため、石油をガザに供給し、その結果として国内のガソリン不足を招いてガソリンスタンドには長蛇の列ができ、選挙後間もなく国民の不満を招いた。

 このため、世俗派の政治勢力や反発した国民はモルシ政権の退陣を軍に要請、軍は13年7月、実力で政権排除に踏み切った。

 一方、ムスリム同胞団系政党出身のトルコのエルドアン大統領は、「モルシ氏は殉教者」と述べ、哀悼の意を表明。17日のテレビ演説で、「暴君が刑務所に入れて処刑すると脅し、死に追いやった」と述べ、エジプトのシシ政権を批判した。

(カイロ 鈴木眞吉)