米、イラン制裁第2弾を発動
体制の崩壊を意図か
トランプ米政権は5日、対イラン制裁第2弾を発動した。8月7日発動の第1弾が鉄鋼や自動車などを対象にしたのに対し、今回は、イラン輸出の屋台骨とも言うべき原油の輸出禁止と、国際金融システムからの締め出しを狙い、700以上の個人や団体、船舶、航空機を制裁対象に追加した。核・ミサイル開発阻止のみならず、イラン・イスラム革命体制の崩壊を意図した側面もあるものとみられている。(カイロ・鈴木眞吉)
「革命防衛隊」資金力を標的
原油に関しては、日本を含む8カ国を対象外とし、欧州各国が、制裁の影響を最小限に食い止めるための各種対策を模索していることから多少の効果漏れがあるとは予想される。しかし、対象外の期間は180日のみに限定され、世界の有力企業100社以上が既にイランからの撤退を決定、イラン通貨・リヤルも暴落、イラン国内の物価も急騰していることなどから、影響が多大になることは避けられない見通しだ。
一部報道によると、今回の第2弾は、イランの最高指導者ハメネイ師や、イラン・イスラム革命の防衛を担う「革命防衛隊」(IRGC)の資金力を標的にしているともされ、政権の中枢崩壊を意図した、より実質的な制裁となっている。
イランが現体制を維持する源泉はイスラム教シーア派の信仰にあり、同信仰をバックに成功させたイラン・イスラム革命が彼らの精神的よりどころとなっている。米国の制裁は、イラン・イスラム革命を守り、革命輸出による世界制覇を「聖戦中の聖戦」として、あらゆる政策や行動の原点と考えるイラン指導部の真っただ中に巨大な楔(くさび)を打ち込むことになる。
イラン・イスラム革命体制を守るために1979年に設立されたのがIRGCで、大規模な軍事力、政治力、経済力を誇る軍隊だ。IRGCの国外での作戦を実行する特殊部隊が「コッズ部隊」で、制裁の一部はこの部隊を標的にしたものとなっている。
トランプ大統領はIRGCを「腐敗したテロ部隊であり軍事勢力だ」と見なしている。
IRGCへの制裁は既に第1弾の段階から開始されている。
米国が、イラン核合意からの離脱を発表したのは5月8日。仏メディアによると、その2日後の10日、米財務省は、IRGCが大規模な為替ネットワークを運営してドル資金を調達、「コッズ部隊」に数百万㌦の資金を調達しているとして、アラブ首長国連邦(UAE)と共に、この調達を遮断するための制裁措置を講じたと発表した。
制裁は、IRGCの為替ネットワークを世界のドル取引から締め出すことを狙いとしたもので、米国の個人・企業はこのネットワークとの取引を禁じられることになる。
その後、財務省が行ったもう一つの制裁は10月16日、IRGCの傘下にある民兵組織「バシジ」がイラン国内で展開するネットワークが、少年兵を訓練してシリアなどの戦場に送っていたとして、関連企業など約20団体を制裁の対象に指定した。
IRGCと「コッズ部隊」を経済的に締め上げ、中東地域を不安定化させるイランの活動を封じる狙いがある。
制裁第2弾の発動に際し、米財務省が公表した対象リストには、イラン・イスラム革命後の歴代の最高指導者ホメイニ師やハメネイ師が、国家を支配するために一元管理してきた「EIKO」と呼ばれる組織に連なる投資会社傘下の団体が多数追加された。英メディアによると、EIKOはイラン議会からも干渉されない秘密の口座を有し、その資金力は950億㌦(約10兆7350億円)とされる。傘下の団体が弾道ミサイル開発やレバノンのシーア派民兵組織ヒズボラ(神の党)など、中東各地域のイスラム教シーア派武装勢力の支援などに使われていたとされている。