20年までに「宇宙軍」を 米副大統領表明


中露の脅威に対抗

 ペンス米副大統領は9日、2020年までにトランプ大統領が提唱する「宇宙軍」を米軍に創設することを目指すと発表した。急速に宇宙開発を進め、米国の優位を脅かす中国やロシアに対抗する狙いがある。

ペンス副大統領

9日、ワシントンの米国防総省で演説するペンス副大統領(AFP時事)

 ペンス氏は国防総省で行った演説で、中国、ロシアについて「新たな戦争兵器を宇宙へ持ち込もうとしている」と批判。「新たな戦場に備えるため、米軍の次の偉大な章を書く時が来た」と宇宙軍創設の意義を訴えた。

 米国は近年、ミサイル防衛や写真撮影などによる情報収集といった幅広い軍事活動で人工衛星などの宇宙技術への依存を強めている。これに対して、中国やロシアは、軍事衛星を破壊できる衛星攻撃兵器(ASAT)の開発を急速に進め、米国にとって脅威となっている。

 中国は07年、人工衛星をミサイルで破壊する実験に成功。その後もASATの実験を繰り返し、15年には人民解放軍に宇宙、諜報、サイバー機関を統合した「戦略支援部隊」を創設した。

 ロシアも15年に空軍を再編して「航空宇宙軍」を創設し、衛星攻撃能力などの開発を推進している。コーツ米国家情報長官は「中露両国のASATは数年で運用の初期段階に達するだろう」と警告する。

 ペンス氏は、中露両国が「宇宙空間における米国の優位性に挑戦しようとしている」と危機感を表明。「敵はすでに宇宙を戦闘領域に変えた。米国はこの挑戦に対し怯むことはない」と強調した。また、ペンス氏は、中国、ロシアは、既存のミサイル防衛態勢では探知や迎撃が困難な極超音速兵器の開発も進めていると指摘した。

 宇宙軍が実現すれば、米軍では1947年の空軍創設以来の新部門誕生で、陸海空軍と海兵隊、沿岸警備隊に続く6番目の軍隊となる。

(ワシントン山崎洋介)