イスラエル、ガザ境界で続く攻撃の応酬
軍が地下トンネル破壊
イスラエルによる封鎖の続くパレスチナ自治区ガザの境界付近で武装組織とイスラエル軍との攻撃の応酬が続いている。イスラエル軍は、ガザ地区からイスラエル領内に延びる地下トンネルの破壊にも取り組んでいるが、イスラム根本主義組織ハマスはトンネル網の再建を試みるなど、いたちごっこが止まらない。(エルサレム・森田貴裕)
ハマスは支援金「埋蔵」
ガザ地区北部境界付近で17日、イスラエル軍部隊を標的とした爆発が複数発生した。境界フェンスの数カ所で簡易爆弾(IED)が爆発したが、イスラエル軍側に死傷者は出ていない。
15日にもガザ地区北部境界東側の2カ所でIEDが爆発しており、ここ3カ月間にガザ境界で発生した爆発は、これで5回を数えた。
イスラエル軍は17日夜、報復として、ガザを実効支配するハマスの軍事施設2カ所とガザ市内の農地の計3カ所を砲撃、空爆した。イスラエル軍は、ガザ地区で発生する全ての事象はハマスに責任があるとしている。
イスラエル軍は18日、ガザ地区からイスラエル領内に延びる地下トンネル2本を破壊したと発表した。ガザ南部のラファからイスラエルのエシュコル地域に延びる地下トンネルに、イスラエル領内の地上から掘削機械で穴を開け、流動性のある材料を流し込み、再使用が不可能となるような措置を行ったという。
ガザ市内東側の農地に位置するもう一つの地下トンネルは、イスラエル空軍機による空爆で破壊された。
ハマスのスポークスマンは、地下トンネルの破壊について「使用されていない古いトンネルだ」と主張。「トンネル発見の発表は、強さの幻想と虚偽の勝利を売り込み、イスラエルの国民や国際社会を惑わす新しい策だ」と付け加えた。
イスラエルのリーベルマン国防相は、「ハマスはガザ市民の福祉に資金を投資すべきだ」と強調。
ネタニヤフ首相は、「われわれは、イスラエル国民を傷つける企てに対して、断固としてしかるべき行動を取る。地下トンネル破壊は、今後も続ける」と述べ、軍のトンネル破壊を称賛した。また「ガザへの援助資金が地下に埋蔵されていることを国際社会が認識する時が来ている」と強調した。
国際社会からのガザ市民への支援金は、ハマスの軍事資金となり、悪化の一途をたどり続けているガザ市民の生活状況は今も変わらない。
イスラエルは2005年、ガザ地区から軍と入植者を完全撤退させた。それ以来、依然として陸と海のガザ境界を厳重に管理し、ガザからの出入りを制限している。また、エジプトは、安全保障上の懸念を理由にガザとの国境を閉鎖している。
14年のガザ侵攻で、ハマス戦闘員は数十本の地下トンネルを通り、イスラエル領内に侵入、イスラエルの軍隊を急襲した。軍によると、14年のガザ侵攻で軍が破壊した地下トンネルは32本で、ハマスは破壊された地下トンネルの残りを使用して、地下トンネル網を再建しようとしているという。
軍はここ半年間に、ガザ境界の東側のキスフィム地域、エインハシュロシャ地域、エジプト国境近くのケレムシャロム地域で、地下活動の検出が可能な最新技術を駆使し、イスラエル領内に延びる地下トンネル3本を見つけ出し、破壊している。
また、ガザ境界沿いに、総延長60㌔の最新式センサー付きの地下壁を建設中だ。総工費11億㌦(1160億円)で、来年中頃までの完成を目指す。