エルサレム首都認定にパレスチナ反発、EUに仲介要請か

 国連総会の緊急特別会合で昨年12月21日、トランプ米大統領による「イスラエルのエルサレム首都認定宣言」の撤回を求める決議案が賛成多数で採択された。トランプ大統領は前日、決議案に賛成する国に対し経済援助を削減すると警告、被援助国の中には表決を欠席したり、棄権する国も出ており、トランプ氏の発言の影響を受けたものとみられている。決議に拘束力はないものの、大多数の加盟国は、エルサレム首都認定に拒否の姿勢を明確にした。(エルサレム・森田貴裕)

米国は難民救済機関への資金停止

 トランプ大統領が昨年12月6日にエルサレムをイスラエルの首都と認定した問題で、パレスチナ自治政府は31日、今後の対米関係を協議するためゾムロット駐米代表(大使に相当)を召還すると発表。自治政府のアッバス議長は「米国はもはや調停者ではない」と非難し、米国が中立的な仲裁者としての立場を失ったと批判した。

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パレスチナ自治区ガザ市で「エルサレムはパレスチナの首都」と書いたプラカードを掲げる女性=2017年12月6日、UPI

 東エルサレムを首都とする国家樹立を目指すパレスチナは反発し、米国の仲介による和平交渉を拒否する姿勢を見せている。

 ヘイリー米国連大使は1月2日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を停止すると表明。

 ヨルダン川西岸、ガザ、ヨルダン、レバノン、シリアにいるパレスチナ難民590万人の教育や医療、福祉を提供するUNRWAに対する米国の拠出金は、2016年で3億7000万㌦(約415億円)近くに上り、各国政府の拠出金の中では最大。米国に次ぐ欧州連合(EU)でも、16年の拠出金額は米国の半分以下だった。

 トランプ氏は2日、ツイッターで「パレスチナに毎年何億㌦も払っているのに、感謝や尊敬が全くない」と述べ、和平を協議する意思がないパレスチナへの米国の支援を停止する可能性があると警告した。米側は、パレスチナがイスラエルとの和平交渉のテーブルに再度着くことを望まない限り支援はしないという姿勢だ。

 これに対し、パレスチナ解放機構(PLO)幹部のハナン・アシュラウィ氏は「パレスチナ人の権利はお金では買えない。われわれは脅しには屈しない」と一蹴した。ガザを実効支配するイスラム根本主義組織ハマスは、「野蛮な米国の行動を反映した安い政治的脅迫だ」と退けた。自治政府幹部によればアッバス議長は、米国の仲介による和平交渉を諦め、今月にもEUを訪問し新たな仲介役による和平交渉を目指す方針だ。

 イスラエルのネタニヤフ首相は7日、パレスチナが交渉のテーブルに戻らなければ支援を削減するというトランプ氏の発表について「トランプ大統領のUNRWAに対する強い批判に完全に同意する」と指摘。「イスラエルは、米国の資金提供を止めさせたくはない」と述べたものの、「パレスチナ難民問題を永続させる組織だ」とUNRWAの存在そのものに疑問を呈した。

 この発言を受けてUNRWAは声明で、「組織の任務は、国連総会によって設定されている。そのメンバーは当局の人道的、人間開発ミッションを強く支持し、平和と安全に不可欠な貢献に敬意を表しながら、中東で最も疎外化されたコミュニティーの一部と協力している」とその存在意義を強調した。また「難民の危機を永続させるのは、紛争の当事者が問題に対処できないことだ」と、難民問題が未解決なのは、イスラエルにも責任の一端があることをにおわせ、ネタニヤフ首相の発言に反論した。