シリア化学兵器攻撃で露が情報操作

ビル・ガーツ

 米政府は今週、シリアに対する巡航ミサイル攻撃の引き金となった化学兵器攻撃に関する電子・画像情報をもとに新たな情報を公開した。数十人の死者を出した化学兵器攻撃についての記者へのブリーフィングで政府高官は、ロシア政府は、同盟国シリアのアサド政権への批判をかわすために情報操作を行い、偽情報を流したと指摘した。

 情報操作は、化学兵器攻撃の責任をシリア軍以外の勢力に負わせることを狙ったものだ。ロシアはさらに、攻撃に使われたのは神経ガス、サリンではないとうその主張を展開している。シリアは、ロシアが仲介した合意で化学兵器をすべて廃棄したことになっていたからだ。

 ロシアのプーチン大統領は12日、この情報操作について、米情報機関がシリアの化学兵器攻撃の証拠を捏造(ねつぞう)したと主張した。

 トランプ米大統領は同日のFOXビジネスネットワークでのインタビューで、ロシアがシリアの「悪人」を支援しており、これは「ロシアにとってよくないことだ」と主張した。

 米政府高官は「ロシアがそこで起きたことを隠蔽(いんぺい)しようとしていることは明らかだ」と語った。さらに同高官は「この偽情報による隠蔽工作は、攻撃のその日に始まり、まだ続いている」と指摘した。

 公開された情報機関の報告では「シリア政権と主要同盟国ロシアは、シリア国民に対する今回と過去の化学兵器攻撃を誰が行ったかについて、国際社会を撹乱(かくらん)しようとしている」と結論付けられている。

 ロシアは当初、シリアのイドリブ県ハーンシャイフーンでの化学兵器攻撃の報道を「挑発的ないたずら」と主張、映像などの証拠は、捏造されたものだと主張していた。しかし、シリア反政府勢力ではこれだけの量と質の映像を作ることは難しく、攻撃を受けた場所での死者の悲惨な映像も流れている。

 その後ロシアは、情報操作の方針を変え、化学兵器による被害は、シリアの爆弾が、この町の郊外の化学兵器貯蔵施設に当たったことで起きたと主張するようになった。

 ところが、過激派組織「イスラム国」(IS)は、これまでに化学兵器を使用したことがあるものの、ハーンシャイフーンで使用されたサリンは保有していない。

 さらに、米情報機関が入手した映像によると、化学兵器爆弾の少なくとも1発は、ハーンシャイフーン北部の通りの中央に落ちていた。この化学兵器爆弾によってできた穴は、通常の高性能爆弾によるものとは違うという。

 シリアは2016年に3回の化学兵器攻撃に関わったとされているが、これらの攻撃は、海軍の巡航ミサイル、トマホークによる攻撃を受けた基地とは違う飛行場から行われていた。

 報告は「ロシアの主張は、アサド政権への非難を逸(そ)らし、敵勢力の信用を貶(おとし)めようとするものと見れば、納得がいく」と指摘している。