揺れるイスラエル・パレスチナ問題
トランプ米大統領が「2国家共存」方針を転換
「2国家共存か、1国家案か」-トランプ米大統領の出現により、中東問題の核心「イスラエル・パレスチナ問題」が揺れている。核心であるユダヤ教とキリスト教、イスラム教の聖地を抱えるエルサレムの帰属をめぐる問題は、住民の人生の価値そのものに最も深く関わる宗教・信仰問題が背後にあるだけに、妥協は困難だ。(カイロ・鈴木眞吉)
アッバス議長は反発避ける
パレスチナ人の65%「2国家は実現せず」
トランプ大統領は2月15日、米ホワイトハウスで、ネタニヤフ・イスラエル首相と会談、イスラエルと将来のパレスチナ国家の「2国家共存」には、必ずしもこだわらない方針を表明した。「両当事者が交渉で解決し、米国はそれを支持する」と明言、歴代米政権が唯一の解決策としてきた「パレスチナ国家樹立による2国家共存」方針を転換した。
2国家共存を目指す和平交渉への道は、1993年のオスロ合意で開かれ、アラブ連盟や米国、ロシア、国連、欧州連合(EU)など国際社会も一貫して支持、規定路線化していただけに、パレスチナ側の失望と反発は大きい。
ただ、アッバス・パレスチナ自治政府議長は批判や反発は避け、「和平実現に向けてトランプ政権と積極的に関わる用意がある」との声明を発表した。一部報道によると、パレスチナ住民の世論調査では、「2国家は実現不可能」と考える住民が65%もおり、再検討を迫られる可能性もある。
2国家共存への道筋は、①1967年の第3次中東戦争で、イスラエルが、ガザ地区、東エルサレムを含むヨルダン川西岸を占領する以前の停戦合意状態に戻し②同地域内に独立パレスチナ国家を樹立③両国家が平和的に共存する状態を目指す-というものだ。
当時のアラファト自治政府議長とイスラエルのバラク首相が2000年7月米国で15日間協議したが、決裂、反イスラエル闘争(第2次インティファーダ)が勃発した。01年3月、シャロン党首が首相に就任し、自治区への軍事侵攻を本格化した。
06年1月、イスラム根本主義過激派組織ハマスがパレスチナ評議会選で圧勝、同年6月にガザ地区を武力制圧してからは、08年と12年、14年と3回にわたり、イスラエル軍と衝突した。
オスロ合意後約24年が経過、自治の拡大は一定程度なされたものの国家創建にまでは至らず、イスラエルは入植地を拡大した。1967年以来140の入植地建設を行い、60万人以上(イスラエルのユダヤ人人口の約9%)のイスラエル人が入植地で生活している。
国際社会は入植地建設を国際法違反と非難しているものの、イスラエルはこの判断を受け入れていない。オバマ前政権が仲介した和平交渉も2014年4月に頓挫した。
ネタニヤフ首相は09年に、歴代米政権に合わせて表向き2国家共存を容認したものの、今回「2国家共存構想」について尋ねられると、「レッテル」ではなく、「内容」を重視していきたいと答え、和平への二つの前提条件を提示した。
パレスチナはイスラエル国家を承認しなければならないこと、そして、どのような和平合意でも、ヨルダン川西岸地域全体の治安維持は、イスラエルが権限を維持すべきだとした。
さらに、地域のアラブ諸国が参加する形の和平協議が望ましいとの考えも表明、トランプ政権もエジプトやサウジアラビアなどが参加する和平協議を検討しているとされる。
双方の合意を妨げる最大級の問題は、エルサレムの帰属と難民帰還問題だろう。イスラエルは、第1次中東戦争で獲得した西エルサレムと、第3次中東戦争で占領・併合した東エルサレムと合わせ、「不可分の永遠の首都」と主張するのに対し、パレスチナ自治政府は、東エルサレムを将来の独立国家の首都と位置付けている。
国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)に登録する難民数は、15年1月現在で558万9000人。膨大な数の難民受け入れはそのまま選挙結果を左右し、ユダヤ国家維持が困難になることからイスラエルは難民の帰還権承認を拒絶している。
そんな中、イスラエルが「1国家」で行けると考える論拠は、①イランを脅威とするアラブ諸国と連携できる②パレスチナは経済と治安でイスラエルに頼らざるを得ない-ことだ。「外堀を埋めれば、パレスチナは現状を認める」との読みがある。





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