トルコでクーデター未遂 軍の一部が決起、死者260人以上
【カイロ鈴木眞吉】トルコで15日午後10時半ごろから16日にかけ、国軍の一部勢力が軍事クーデターを決行したが、現地報道によると16日昼現在、軍施設の一部で抵抗が続いているものの、同企ては失敗した。フルースィ・アカール参謀総長が同日午前に記者会見し、「クーデターは失敗し、われわれが全土を掌握している」と明言。政府は反乱部隊の完全鎮圧に全力を挙げている。
政府、完全鎮圧へ全力
ユルドゥルム首相も同日午前、記者会見し、「クーデター勢力はテロリストと協働していたが、クーデターは失敗した」と強調。さらに「首謀者は拘束された」とも述べた。国際社会に対し、トルコはテロとの戦いを強めていくとも明言、トルコ憲法に死刑を導入する法改正の検討も示唆した。同日午前の時点で死者はクーデター参加者とは別に民間人47人を含む161人、負傷者は1440人。トルコ正規軍は反乱軍兵士104人を殺害し、2839人を逮捕した。
クーデター勢力は当初、首都アンカラの軍司令部を占拠、参謀総長ら幹部を拘束。国営テレビも制圧、同テレビを通じて全権掌握を宣言し、戒厳令と夜間外出禁止令を公布した。また、首都ではヘリコプターから国会と警察特殊部隊本部などを爆撃して17人を殺害し、大統領官邸にも戦車部隊を展開するなどした。
最大都市イスタンブールでは、与党「公正発展党」支部を制圧、アタチュルク国際空港に戦車部隊を展開するなどして各地で衝突が相次いだ。同空港は現在、正規軍の支配下にある。
休暇でエーゲ海沿いのトルコ南西部マルマラスに滞在していたエルドアン大統領は15日にクーデターが発生すると、民間放送を通じて国民に街頭に繰り出して抵抗するよう呼び掛けた。イスタンブールでは、市民が中心部のタクシム広場で国旗を振るなどして政府支持の意思を表明、戦車に立ち向かうなどした。
同大統領は16日未明にイスタンブール空港に到着。同大統領が滞在していたマルマラスのホテルは、大統領の出発後に空爆された。
反乱軍勢力は「平和評議会」を名乗り、クーデターの理由を「民主主義と人権、自由の再確立、法の支配の再確保」などと説明している。これは、最近のエルドアン大統領が、近代トルコ建国の父ケマル・アタチュルクによる世俗主義を公然と廃し、イスラム根本主義に傾く強権的な姿勢に、反旗を翻したものとみられる。軍はこれまで、国是である世俗主義の「守護者」を標榜(ひょうぼう)してきた。