アフガン首都陥落、新体制に向け会合続く

 アフガニスタンの首都カブールが15日にイスラム主義組織タリバンに占拠された。全権を掌握したタリバンの幹部は、新体制樹立に向けてアフガンの政治指導者らとの会合を続けている。一方で、抵抗運動も始まっている。アフガン国旗を掲げたデモが各地で行われ、19日の独立記念日に合わせた集会では、過去の反タリバン闘争で最も有名な指揮官の息子が、タリバンに対する武装闘争を宣言した。(エルサレム・森田貴裕)

第1副大統領は徹底抗戦へ
反タリバン抵抗運動拡大も

 タリバンのザビフラ・ムジャヒド報道官は22日、「アフガンの政治指導者らとの新政府の構成に関する協議が進行中であり、新政府は近い将来発表される」と述べた。タリバン高官によると、新政府創設の枠組みは数週間以内に発表される予定だという。

アフガニスタン北部パンジシール州で、イスラム主義組織タリバンに対抗し、武器を手に集まるアフガン人=19日(AFP時事)

アフガニスタン北部パンジシール州で、イスラム主義組織タリバンに対抗し、武器を手に集まるアフガン人=19日(AFP時事)

 ハミド・カルザイ元大統領とアブドラ国家和解高等評議会(HCNR)議長は21日、首都カブールでタリバン政務官4人と会談した。双方は、現在の安全保障や政治的発展、将来の包括的政府の樹立に焦点を当て意見を交換したという。両氏は18日にも、カブールでタリバン指導部メンバーらと会合を行っている。

 また、カルザイ氏とアブドラ氏はカブールで21日、タリバンのアブドゥルラフマン・マンスール・カブール州知事代理と会談、カブール市民の安全について確認した。両者は、市民の生命、財産、尊厳の保護優先を繰り返し訴え、「首都が正常に戻るためには、市民が安全と安心を実感することが不可欠である」と強調した。

 マンスール氏は「カブールの人々の安全のために可能な限りのことをする」と約束したという。

 一方、アフガンのアムルラ・サレー第1副大統領は17日、声明で「大統領が不在の場合、私が正当な暫定大統領だ」と宣言、戦争は終わっていないとしてカブールを掌握したタリバンと徹底抗戦する考えを示した。大統領を務めていたガニ氏が国外逃亡したため、憲法に従えば第1副大統領が職務を引き継ぐことになる。サレー氏は19日、

ツイッターで 「国旗を掲げ、国家の尊厳を守る人々に敬意を表す」と述べ、各地で拡大するタリバンへの抵抗活動を支持した。サレー氏はタリバンがカブールに進攻した15日にもツイッターで「いかなる状況でもタリバンに屈することはない」と述べていた。

 サレー氏は、2001年9月11日の米同時多発テロ直前に暗殺された反タリバンの国民的英雄であるマスード司令官の息子アフマド・マスード氏やビスミッラー・カン・モハマディ国防相と共に北部パンジシール州で、政府軍兵士や地元軍閥らと反攻の準備を進め、部隊を集結させているとみられる。パンジシール州はマスード司令官の出身地。タリバンはパンジシール州以外は、ほぼ制圧した。パンジシール州には、タジク民族を含む10万人以上が住んでおり、タリバンに対する唯一の抵抗拠点となっている。アフマド・マスード氏は、タリバンに対して宣戦布告。戦闘の準備はできていると主張し、米国に武器と弾薬を供給するよう求めている。

 中東防衛担当の元米副次官補で国際治安支援部隊(ISAF)の元米財務省上級代表のシモネ・レディーン氏は、米国の中東ニュースサイト「メディアライン」で、パンジシール州からの抵抗運動は効果的だと語る。「抵抗運動は資金調達と物資補充に焦点を当てる必要があり、友好国に物的および財政的支援を求める可能性が高い」と述べた。また、ここ最近のタリバンのジャーナリスト弾圧によって、多くのメディアはアフガンで自由に活動することができなくなると指摘。タリバンに対抗するため将来的にはソーシャルメディア上で市民の報道に目を向ける必要が出てくるという。

 レディーン氏は、欧州連合(EU)はタリバンを承認しておらず、反タリバン抵抗運動を支持する可能性があり、将来的には湾岸諸国の影響力と関与が高まると予想する。

 アフガン北部バルフ州のアタ・モハマド・ヌール前知事は、「次の政府が包括的でなければ受け入れられない。戦争は終わっておらず、まだ先は長い。われわれはタリバンをテストする」と述べ、包括的政府が樹立できなければタリバンへの抗戦を続けるとしている。

 今後、包括的政府が樹立できなければ反タリバン抵抗運動が拡大する可能性がある。