イスラエル連立政権発足
ネタニヤフ氏が退陣
新首相に右派ベネット氏
イスラエル国会(定数120)は13日、野党8政党が政権樹立で合意した新連立政権に対する信任投票を行い、賛成多数で承認した。これまで連続12年、歴代最長の通算15年首相を務めたネタニヤフ氏(71)は退陣し、2年間で4度の総選挙が行われるなど混迷を極めた政局は大きな節目を迎えた。
信任投票の結果は、賛成60票、反対59票で、1人が棄権した。新首相には、極右政党ヤミナの党首で国防相、経済相、教育相などを歴任したナフタリ・ベネット氏(49)が就任した。
ネタニヤフ氏は「左派政権はイスラエルの安全保障と未来を危険にさらす」などと訴え、政権発足の阻止を狙い、野党側の右派議員らの切り崩しを図ったが、及ばなかった。ネタニヤフ氏は国会で、「われわれは復活する」と宣言し、投票後にはベネット氏に歩み寄り、握手を交わした。
最長で4年の任期となる首相職は「輪番制」を採用し、まずベネット氏が務め、約2年後の2023年8月27日に中道政党イェシュアティド党首のヤイル・ラピド元財務相(57)に引き継ぐとしている。ラピド氏はそれまで副首相兼外相を務める。
新連立政権は右派、左派、中道派、アラブ系イスラム政党の異なった政策を志向する8政党が参加。パレスチナ国家の樹立に反対する2政党も含まれ、パレスチナとの和平交渉をめぐっては、意見一致の可能性は極めて薄い。
ベネット氏は、信任投票に先立つ演説で、新連立政権は「イスラエルの全国民のために仕事をする」としており、当面は教育や医療など内政問題に集中するとみられる。対イラン政策については、「イラン核合意への回帰は間違いだ」と指摘し、「イスラエルはイランの核兵器保有を容認しない」と述べ、ネタニヤフ氏の強硬策を継続する意思を表明した。また、パレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム根本主義組織ハマスとイスラエル軍との5月の交戦については「暴力やテロを容認するわけにはいかない」と述べ、「静寂があればパレスチナとの経済協力を強化する」と付け加えた。
ベネット氏は、13日夜遅くに開かれた最初の閣僚会議で、新連立政権の幅広い見解を強調し、各政党間のイデオロギーの違いについて「抑制」するよう閣僚らに求めた。新連立政権が3カ月の期限内に予算案を成立させることができなければ解散、総選挙へ向かうことになる。
3月に行われた総選挙では、ネタニヤフ氏が率いる与党右派リクードが30議席を獲得して第1党となったが、収賄罪などで公判が続いているネタニヤフ氏は、過半数の議員から支持を得られず、期限内での組閣交渉は不調に終わった。その後、リブリン大統領から組閣を要請された第2党のイェシュアティド(17議席)を率いるラピド氏が連立交渉をまとめ、今月2日に野党8政党が新政権の樹立で合意していた。
(エルサレム・森田貴裕)