米エジプト、恒久停戦へ外交交渉
イスラエルとパレスチナ自治区ガザ地区を実効支配するイスラム根本主義組織ハマスは5月21日に停戦に入り、11日間に及ぶ攻撃の応酬は、いったん収束した。イスラエルとハマスの双方にパイプを持ち「相互かつ無条件」の停戦を仲介したエジプトは、米国と協力し、恒久的な停戦に向けた外交交渉を試みている。イスラエルは、ハマスが拘束したイスラエル人捕虜の釈放を要求した。(エルサレム・森田貴裕)
イスラエルは捕虜釈放要求
ハマスの攻撃再開も
エジプトのカメル総合情報庁長官が30日、エルサレムを訪れ、イスラエルのネタニヤフ首相と会談した。両氏は、イスラエルとエジプト両国間の協力の強化や中東地域の問題について話し合い、安全保障問題などさまざまな政策に関する両国の理解や努力を称賛した。報道によると、エジプトのシシ大統領が、恒久的な停戦へ向けて話し合うようにカメル氏に指示したという。イスラエル首相府によれば、ネタニヤフ氏は、ハマスに拘束されているイスラエル人捕虜の釈放や兵士の遺骨返還を要求した。また、ハマスの軍事力強化につながる支援物資の軍備流用を防止するためのメカニズムとプロセスを提起したという。
とイスラエルのネタニヤフ首相(EPA時事).jpg) 
同日には、元イスラエル軍参謀総長のアシュケナジ外相がエジプトの首都カイロを訪れ、シュクリ外相と会談し、2国間の経済貿易関係の強化や、交戦によって荒廃したガザ地区の復興について協議した。カイロのイスラエル大使館によると、イスラエルは捕虜釈放を含まない長期停戦には合意しないとしている。
一方、カタールに亡命中のハマスの最高指導者ハニヤ氏のエジプト訪問も予定されている。
これらに先駆けて、ブリンケン米国務長官が中東を初訪問した。ブリンケン氏は25日、エルサレムでネタニヤフ首相と会談し、今後もイスラエルの安全保障に携わっていくことを強調した。バイデン米政権は、ハマスのロケット弾攻撃に対するイスラエルの自衛権を支持している。ネタニヤフ氏は、もしハマスが停戦を破れば「非常に強力な対応を行う」と警告した。
その後、パレスチナ自治区ヨルダン川西岸のラマラで自治政府のアッバス議長と会談した。ブリンケン氏は、「米政権がイスラエル軍とハマスとの交戦によって荒廃したガザ地区への緊急支援として550万㌦(約6億円)、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)にも3200万㌦(約35億円)を拠出する」と表明。「米国がテロ組織に指定しているハマスの手に渡らないよう支援する」とも述べた。また、トランプ前政権が廃止したパレスチナに対する業務を担当するエルサレム米総領事館を再開させる考えを表明。総領事館再開がパレスチナの支援をする上で重要な手段となると述べた。
26日には、エジプトのカイロでシシ大統領と会談し、イスラエルとハマスの停戦維持に向けた協力強化で一致した。エジプトは、停戦後のイスラエルとガザ地区に監視団を派遣し、復興支援として5億㌦(545億円)の拠出を表明している。ブリンケン氏は「エジプトという真の効果的なパートナーによって、比較的早期の停戦が可能となった」と評価した。シシ大統領は、「イスラエルとパレスチナの直接交渉の必要性を改めて確認した」と述べた。
ブリンケン氏はこの後、ヨルダンでアブドラ国王と会談。国王は、米国のエルサレム総領事館再開について「パレスチナと米国との対話が容易となる」と歓迎した。
一方のハマスは26日、「ガザには500㌔の地下トンネル網があり、イスラエルが破壊したのは5%にすぎない」とした上で、「エルサレム旧市街にあるイスラム教聖地ハラム・アッシャリフ(ユダヤ教呼称「神殿の丘」)で、パレスチナ人に対するイスラエル治安部隊の過剰な武力行使や、東エルサレムのシェイク・ジャラ地区でパレスチナ人住民が強制退去になった場合は、攻撃を再開する」と警告した。
イスラエルの存在を認めないハマスは、これまで一時停戦と停戦破りを繰り返しており、イスラエル殲滅(せんめつ)を掲げるイランから武器や資金の支援を受けているため、イスラエルへの攻撃が再開される可能性がある。










