コロナ第3波のイスラエル、超正統派の間で感染拡大
政府の規制無視し大規模集会
新型コロナウイルス感染拡大の第3波が発生しているイスラエルでは、ワクチン接種が世界で最も早いペースで進んでいる。保健当局は新型コロナ新規感染者と重症者の減少を期待していたが、1月31日の時点で、一般市民の陽性率は9・5%、ユダヤ教超正統派市民では20・1%とさらに高く、新型コロナはいまだ衰えを見せない。政府の規制を無視して集団での礼拝や葬儀などを続ける超正統派の間で感染が拡大している。(エルサレム・森田貴裕)
変異株感染力がワクチンを相殺
エルサレムで31日、イスラエルで最も古い神学校「ブリスクのイェシーバー」のラビ(ユダヤ教の宗教指導者)、メシュラム・ダビッド・ソロベッチク師(99)の葬儀が行われた。エルサレム北部のサンヘドリア地区にあるソロベッチク師の自宅からエルサレム西部のギバットシャウルの墓地に向かう黒い服を着た超正統派の葬列は1万人規模となった。
同日夜にもエルサレム中心部のブカリム地区で、神学校「カメニッツ・イェシーバー」のラビ、イツハク・シェイナー氏(98)の葬儀が行われた。シェイナー氏自身が生前、大規模な集会を思いとどまらせるよう政府の規制措置の順守を促していたにもかかわらず、葬儀には約8000人が集まった。
両ラビの葬儀に先立ち、警察当局は宗教指導者と話し合ったが、大規模な葬列を阻止することはできなかったという。警察関係者はイスラエルのテレビ局チャンネル12で「警察部隊が群衆を分散させようとすれば、流血があっただろう」と述べた。
超正統派約20万人が暮らしているブネイブラクでは24日夜、超正統派と規制違反を取り締まる警察が衝突している。超正統派の暴徒らは深夜、警官がいないのを見計らって市営バスの運転手を外に引きずり出し暴行、バスに放火するなどしバス2台を破壊した。運転手は駆け付けた救急隊員によって救出され、警察は暴徒4人を逮捕した。
イスラエルの人口約920万人の約11%に当たる超正統派は、新規感染者の約4割を占めている。その多くは政府の規制を無視して集団での礼拝や結婚式などを続けており、最近では大規模なイベントも開催し、ほとんどはマスクを着用せず、社会的距離を取ることがない。
イスラエル政府は31日深夜に閣議を開き、新型コロナの感染拡大を抑えるため、都市封鎖の期間を2月5日朝まで延長した。状況によりさらに延長する可能性もある。
政府の新型コロナ対策の責任者ナフマン・アッシュ氏によれば、新たな感染者の約70%は、従来種より感染性が強いとされる英国の変異株だという。保健省は、現在の感染者数の約40%は英国の変異株で、数週間以内に優勢になると推測している。
メイル・ベンシャバット国家安全保障問題担当補佐官は、「イスラエルのワクチン接種キャンペーンは成功したが、ウイルスの急速な感染拡大を抑制するのに十分ではなかった」「変異株の感染速度は、都市封鎖やワクチン接種の効果を相殺している」と述べた。
イスラエルの実社会においてワクチン接種の効果が確認されている。イスラエルのメディア「タイムズ・オブ・イスラエル」によると、イスラエルの保健維持機構(HMO)の一つであるマカビは28日、米ファイザー製のワクチンの有効性について独自の調査結果を発表した。マカビで2回目のワクチン接種を終えたイスラエル人16万3000人のうち、接種後10日以内に感染者31人を確認し、ワクチンの有効性は92%だという。
ファイザー社は、ワクチンの効果について、初回の接種では約52%、2回目の接種で約95%に増加するとしている。
イスラエルでは2月1日の時点で、1日の新規感染者数は5000人以上確認され、累計感染者数は64万人を超え、重症者数は1140人、死者数は4796人となった。300万人以上が初回のワクチンを接種し、179万人以上が2回目の接種を終えた。
ネタニヤフ首相は31日、「イスラエルの医療制度は逼迫(ひっぱく)しているが、1週間に100万人以上のワクチン接種を実施し、問題が生じなければ、経済活動や学校の授業も徐々に再開できるだろう」と述べた。
感染力の強い変異株へのワクチン接種の効果も注目される。

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