核戦争は「現実の脅威」
中露が核戦力増強 米戦略軍司令官
戦略転換の必要性強調
米軍の戦略核を管轄する戦略軍のリチャード司令官は、米シンクタンク「海軍研究所」への寄稿文で、中国、ロシアの核戦力の強化が進み、核戦争が現実の脅威として迫っていると指摘、冷戦後の思考から離れ、核兵器使用を前提とした戦略へと転換すべきとの見方を示した。
リチャード氏は、「ロシア、中国が、通常兵器での敗北が体制や国家の脅威となり得ると認識すれば、地域的な危機が短時間に、核兵器を使用した紛争にエスカレートすることは実際に起こり得る」と指摘、核保有国間の直接的な武力紛争はあり得ないという冷戦終結後の考え方は捨てるべきだとの見方を示した。
リチャード氏はワシントン・タイムズとのインタビューで、「新たな競争の時代にあり、米国は2030年までに競合する二つの核保有国と対峙(たいじ)することになる。米国史上かつてなかったことだ」と指摘、中露の核武装が急速に進展しており、戦略核を強化し、優位性を維持していくことの重要性を訴えた。
また、「敵の脅威と判断基準を理解し、今日の戦略的環境に適応しなければならない」と、現在直面している脅威を把握することの重要性を強調した。
戦略軍はすでに、抑止力の見直しに着手、評価書「戦略的抑止力の失敗のリスク」を改訂した。国防総省も、新たな戦略兵器・システムの導入を進め、指揮管制システムとサイバー能力を強化する必要がある。
中国に関してリチャード氏は、「ロシアと同様、民主主義的価値観に対抗し、世界の経済秩序を自国の利益になるように形成しようとしている」と、中国の覇権主義の危険性を強調した。
また、核戦力の増強によって米軍の「戦略的競合国」への道を進んでいると指摘した。
中国は、核戦力の強化と、地上配備大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射ミサイルの二つの運搬手段の整備に意欲的に取り組んできたが、新型の戦略爆撃機が間もなく完成し、トライアド(3本柱)が整う。
リチャード氏は「中国の核兵器保有は今後10年で、倍加するとみられている」と指摘した。中国戦略軍は、新たな早期警戒・指揮管制能力を備え、即応能力も強化されているという。
また「近年の非核武装勢力との戦いで、核の使用は不可能であり、注意を払う価値はないと考えられるようになっていた」と指摘、01年の同時多発テロ後の20年間、「テロとの戦い」に軍事力を投入してきたことも、増大する核戦争の脅威の軽視につながったと強調した。






