フランス 右派・ルペン氏の人気上昇


コロナ背景に次期大統領選

 フランスで来年春に予定される大統領選挙で、2017年の大統領選決選投票でマクロン大統領と競った右派政党・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン党首(52)への期待が高まっている。新型コロナウイルス対策で苦戦を強いられ、景気回復も思わしくなく支持率が低迷するマクロン氏に対する不満の受け皿となっていると指摘されている。

フランスのマクロン大統領(写真左)と極右政党「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン党首(AFP時事)

フランスのマクロン大統領(写真左)と極右政党「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン党首(AFP時事)

 1月27日付の仏紙パリジャンが明らかにしたハリス・インタラクティブの世論調査結果では、再選に意欲を見せているといわれるマクロン氏と、必ず出馬するとみられるルペン氏が前回と同じように決選投票に進んだ場合、ルペン氏に投票すると回答した人は48%と、マクロン氏の52%に僅差で迫っている。

 ルペン氏は1日、仏政府が打ち出した新型コロナウイルス感染防止のための国境封鎖措置について、マクロン氏が国境を閉鎖する決断を下さなかったために「無駄な時間が経(た)った」と非難したばかり。「私は当初から国境閉鎖が最も効果的と主張してきた」と訴えた。

 この発言は、パリジャン紙の世論調査結果が出た数日後に飛び出し、衝撃を与えた。さらに、同調査結果についてルペン氏は「私が(次期大統領選で)勝つという根拠だ」と強気の発言を行った。これに対しボーヌ欧州問題担当相は1日、「ウイルスにはパスポートがなく、国境封鎖が奇跡の治療法であるかのようには言えない」「魔法の杖(つえ)とは思っていない」と反論した。

 マクロン政権は、2018年11月から長期にわたって反政府運動の黄色いベスト運動が続き、公約に掲げた失業率の抑制はコロナ禍で挫折した。2017年の下院選挙で圧倒的多数の議席を獲得した自身が立ち上げた中道の共和国前進(LREM)は、今は過半数割れの状態に陥っている。その上、中道右派も中道左派も再編中で国民連合は有利ともみられている。

 昨年秋には、イスラム分離主義のテロが連続して起き、英国の欧州連合(EU)離脱後、反EUのポピュリズムがEUでは息を吹き返している状態だ。ルペン氏が国民の不満の受け皿として支持率を上げる可能性は十分あると指摘されている。ルペン氏は前回と前々回の大統領選の1年前の世論調査で「最も大統領になってほしい人物」で1位になっている。

(パリ 安倍雅信)