北朝鮮側で遺骨発掘、行われず


米朝決裂が影響か

 韓国と北朝鮮が昨年9月の軍事合意で実施を決めていた非武装地帯(DMZ)での遺骨発掘作業が、北朝鮮側で停止したままだ。2月に決裂に終わったベトナム・ハノイでの米朝会談が影響しているものとみられる。

 「北朝鮮は、あのあたりで発掘作業をしているはずだった」。韓国軍のイ・ジェウク大佐は、DMZの鉄原一帯を指さしながらこう語った。

 この地域には、南北が朝鮮戦争終結後初めて遺骨発掘で合意したことを受けて道路が設置された。しかし、この数カ月間、北朝鮮兵の姿は見えず、2月以降、作業は停止したまま。南側の韓国では毎日、合意に基づいて発掘作業が進められている。

 イ大佐は、「北朝鮮は、地雷の撤去は実施したが、そこで止まったままだ」と指摘した。ちょうど、ハノイでの米朝首脳会談が決裂し、非核化への米朝間の交渉が停滞した時期と一致する。

 ハノイ会談を前に南北関係は改善し、昨年9月には北朝鮮の平壌で共同宣言と軍事合意が交わされた。

 合意は、南北間の民間・政府間交流の促進など、さまざまな措置を求めている。中でも重要なのは、朝鮮戦争の激戦地だった江原道鉄原の「矢じり高地」での共同遺骨発掘作業だ。

 1952年の戦闘で死亡した300人以上の韓米仏兵、約3000人とみられる北朝鮮兵と中国兵の遺体が残されたままとみられている。

 この地域は53年の停戦で封鎖され、遺骨の発掘が行われるのは初めて。

 鉄原の監視所によると、韓国側では182柱の遺骨が発掘され、各国からのDNAサンプルとの照合作業が進められている。

 北朝鮮は、2018年6月のシンガポールでの第1回米朝首脳会談で、遺骨発掘に意欲を示し、会談直後に、米兵の遺骨を納めたとされる棺55基を米国に送っている。

 トランプ米大統領は、遺骨問題での協力を北朝鮮との外交の大きな成果として繰り返し強調してきた。しかし、当局者らによると、遺骨の返還をめぐる北朝鮮との交流はハノイ会談以降止まっている。

(ワシントン・タイムズ特約)