北が日韓攻撃なら米反撃も

インタビューfocus

緊張高まる韓半島情勢

ナショナル・インタレスト・センター国防研究部長 ハリー・カジアニス氏に聞く

 弾道ミサイル発射や新たな核実験の準備など挑発姿勢を取り続ける北朝鮮に対し、トランプ米政権は圧力を強めている。北朝鮮をめぐる情勢は今後どうなるのか。米シンクタンク、ナショナル・インタレスト・センターのハリー・カジアニス国防研究部長に聞いた。(聞き手=ワシントン・岩城喜之)

北朝鮮の核・ミサイル開発をめぐって緊張が高まっている。トランプ政権が北朝鮮を攻撃する可能性はあるのか。

ハリー・カジアニス氏

 ハリー・カジアニス氏 米シンクタンク、ナショナル・インタレスト・センター国防研究部長。米外交誌ナショナル・インタレスト編集主幹。英ノッティンガム大学・中国政策研究所の非常勤上級研究員も務める。中国や北朝鮮など東アジアの安全保障を専門としている。

 トランプ政権はすべての選択肢がテーブルの上にあるとしているが、米国が北朝鮮を先制攻撃する可能性は低い。ただ、北朝鮮が米本土や日本、韓国にミサイルを撃ち込めば、攻撃する可能性はある。

 逆に、トランプ政権が幾つかの点で北朝鮮に接触を図る可能性も考えられる。ただし大きな譲歩はしないだろう。

米中首脳会談では北朝鮮への対応が主要議題だった。今後、中国が北朝鮮に対して圧力を強化することはあるのか。

 中国による北朝鮮への圧力は期待できない。中国は北朝鮮が混乱するより現状維持を望んでおり、圧力を強化すれば北朝鮮問題が悪化すると考えているからだ。

米中首脳会談中に行ったシリアへの攻撃は、北朝鮮に対する中国の行動に影響を与えると考えるか。

 シリアへの攻撃と北朝鮮の状況は大きく異なるため、中国に圧力をかけるための手段としては有効だと言えない。中国は北朝鮮が核兵器を持っているため、米国の軍事的な選択肢が制限されていることをよく理解している。

 北朝鮮に対して米国が取れる唯一有効な方法は、北朝鮮を援助している中国企業を特定して制裁を科すことだ。

北朝鮮の核・ミサイル開発はどの程度進んでいるとみるか。

 短距離ミサイルについて言えば、高い能力を持っている。韓国や日本への攻撃は確実に行えるだろう。日韓両国はミサイル防衛(MD)能力を備えているが、複数の場所から多くのミサイルを発射された場合、すべて防げるとは言い切れない。

 中距離弾道ミサイルも日本や韓国にダメージを与える能力がある。長距離弾道ミサイルについては、アラスカやグアム、ハワイに到達する能力を有しているとする見方があるが、はっきりとしていない。ただ、北朝鮮は今後3~5年で米本土に到達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成させるだろう。

北朝鮮はすでに短距離ミサイルに核弾頭を搭載できる能力を持っているのか。

 私はそう考えている。中距離ミサイルへの搭載は技術的に難しいかもしれないが、短距離ミサイルに搭載する能力はおそらく持っている。

北朝鮮の脅威に対し、日本は敵基地攻撃能力を持つ必要があると考えるか。

 敵基地攻撃能力は必要だ。北朝鮮が10~20分以内に核ミサイルを発射すると米情報機関から伝えられたとき、自国を防衛する何らかの能力を持っていることは重要になる。また、北朝鮮のミサイル発射を妨害するサイバー攻撃能力も必要になるだろう。