ベルギー連続テロ、未然防止へ本格体制作り急げ


 ベルギーの首都ブリュッセルで大規模な連続テロが勃発し、計34人が死亡した。過激派組織「イスラム国」(IS)が犯行声明を出しているが、何故この時期に欧州の主要国でISによるテロが続発したのか。政府は日本に波及するのを防ぐために、テロリストの入国阻止を中心に対応策を実施しているが、それで十分ではない。

 有志連合切り崩しを狙う

 ISはイスラム教を国教とする国家の形成を目標とし、テロによりイラクとシリアで勢力を伸ばして“国家もどき”の組織を設立した。だが、ここへきて、その狙いは頓挫し始めている。米国などの有志連合によるISへの軍事力による反撃が効果を表し始めたからである。

 テロは少数の勢力で手軽に実施できる闘争手段である。しかし、それを越えてはならない「閾値」――限界が存在する。故ビンラディン容疑者の率いた国際テロ組織アルカイダが9・11米同時テロ以降に勢力が急速に衰えたのは、この閾値を超えた攻撃を実施したためである。このような大規模な攻撃は、公然と軍事力を行使して反撃ができるからだ。

 有志連合の軍事力行使が効果を表し始め、IS支配下の重要拠点が奪還され、幹部の死亡も増え始めている。IS側の対応策は、テロによる有志連合の切り崩ししかなくなっている。ブリュッセルは北大西洋条約機構(NATO)、欧州連合(EU)の両本部がある国際都市である。物流、人、文化の流れだけでなく、同時に犯罪、テロの分野でも“国際化”する。因みに、ブリュッセルのモレンベーク地区は「欧州の過激派の温床」と言われている。

 このように見てくると、昨年11月のパリに続きブリュッセルで大規模テロが発生したからといって、怯えてはテロリストの思うつぼになる。テロの狙いは国民を怯えさせ、それによって自国政府にISへの掃討作戦参加をやめさせるよう行動することを期待しているからだ。

 日本政府はテロを非難し、対応を強化する方針を打ち出している。しかし、善良な外国人、旅行者を装っているテロリストへの警察の対応には限界がある。テロ発生後のテロリストの逮捕も重要だが、肝要なのは発生の抑制である。

 テロへの対応には、地下情報の収集機能が不可欠である。他の主要諸国では、既存のスパイ摘発が主目的の防諜機関やサイバー攻撃対応の電子情報機関が強化され、テロ防止の役割を担っている。ところが、わが国には防諜機関はなく、電子情報機関も発足したばかりで弱体だ。それに、いつまでも他国の収集した情報が貰(もら)えると思ってはならない。

 情報機関の創設検討を

 各国ともテロの未然防止のための情報入手には、多くのカネと要員を投入しているが、必ずしもテロ抑制に成功していないように見える。テロ発生は分かりやすいが、未然防止の成功は表面化しにくいからだ。

 だからといって、テロなど対外情報を収集する本格的な情報機関が不要とは言えない。今回の事件を機に創設を考えるべきである。