ウクライナでの停戦実現へ対露制裁強化を


 ウクライナ東部では今年に入ってから親露派が攻勢を強めている。昨年9月の停戦合意について、親露派は死文化を主張しているが、これ以上犠牲者を増やすことは許されない。

 後ろ盾のロシアが影響力を行使し、親露派に合意を履行させるよう、国際社会は対露制裁を強化すべきだ。

今年に入って戦闘激化

 親露派は先月、東部の国際空港を制圧。ドネツク州マリウポリでは、親露派によるとみられる砲撃で30人が死亡、約100人が負傷し、一度の攻撃での民間人の死傷者数としては過去最悪となった。フェルトマン国連事務次長(政治局長)は「故意に民間人を狙ったものだと言える」と断定し、国際人道法違反に当たると非難した。

 ウクライナと親露派は昨年9月、停戦で合意したが、その後も戦闘は続いていた。親露派幹部は先月、「停戦合意は死んだと言える」と述べている。しかし、住民を巻き添えにして勢力拡大を図ることは許されない。国際社会は合意順守を求めている。親露派は従うべきだ。

 欧州安保協力機構(OSCE)によると、昨年4月に東部で親露派とウクライナ政府軍の戦闘が始まって以降、住民を含む5000人以上が死亡、1万人以上が負傷した。これ以上の流血の拡大は何としても避けなければならない。

 だが、先月末に行われた和平協議は物別れに終わった。国際社会は早期の停戦合意をウクライナ、親露派の双方に促す必要がある。

 ただ物別れの背景には、親露派がもっと有利な条件での停戦を目指して本格的な協議を拒否していることがあるとも指摘されている。そのため、親露派はできる限り支配地域を拡大しようとしているとされる。ウクライナはロシアが兵士9000人を派遣して親露派を支援していると非難している。

 ウクライナで親露派ヤヌコビッチ政権が反政権デモによって崩壊してから、間もなく1年が過ぎようとしている。この間、ロシアはウクライナ南部クリミア半島を一方的に併合し、影響力を維持するために東部の親露派を支えてきた。

 しかし、独立国家であるウクライナの分断を図るような姿勢は容認できない。ウクライナが東部のロシア系住民に配慮して一定の自治権などを認めることは必要だとしても、ロシアが連邦制導入などを押し付けることがあってはなるまい。クリミア併合もすぐに撤回すべきだ。

 欧州連合(EU)は先月末の外相理事会で、ロシアの政治家らを対象とした資産凍結など制裁措置の期限を9月末まで延長することを決めた。追加の経済制裁については、今月のEU首脳会議で協議される。米国も追加制裁の検討を続ける意向だ。

親露派に合意履行させよ

 今年のロシアの実質GDP(国内総生産)は前年比4・8%減となり、大幅なマイナス成長に陥ると予想されている。米欧の制裁がロシア経済に大きな打撃を与えていることは確かだ。日本を含む国際社会は圧力を強化し、親露派に停戦合意を履行させるようロシアに促さなければならない。

(2月3日付社説)