ベラルーシ 大統領は民意尊重して退陣を
ベラルーシでは、ルカシェンコ大統領の6選が決まった選挙結果をめぐって抗議デモが続いている。選挙結果は改竄(かいざん)された可能性が高い。ルカシェンコ氏は民意を尊重して退陣すべきだ。
不正選挙への抗議拡大
ベラルーシでは、1994年から26年間にわたって権力を握り続け「欧州最後の独裁者」と呼ばれるルカシェンコ氏への不満が高まっている。経済は停滞し、新型コロナウイルス対策には「ウオッカが有効」などと発言したことも反発を招いた。
大統領選では、反政権派の女性候補スベトラーナ・チハノフスカヤ氏が支持を拡大。同氏は政権に批判的な映像ブロガー、セルゲイ・チハノフスキー氏の妻で、大統領選出馬を目指していた夫が治安当局に拘束されたために立候補した。選挙戦では「平和的な変化」を訴え、大統領選勝利の場合は「半年以内に公正な形で大統領選をやり直す」ことを公約に掲げた。
中央選管はルカシェンコ氏が80%超の得票率で圧勝したと発表したが、開票所などでの不正を指摘する声が相次いだ。抗議デモが広がったのは当然だ。首都ミンスクでは20万人規模のデモが行われた。工場を視察したルカシェンコ氏に「辞任せよ」という罵声が浴びせられるなど権威は失墜している。
政権の暴力的なデモ鎮圧で死傷者が出たほか多くの市民が拘束されたことも、ルカシェンコ氏への逆風を強める結果となった。ポンペオ米国務長官はベラルーシ大統領選について「自由でも公正でもない」と批判。欧州連合(EU)は外相会議で、選挙結果改竄と抗議デモを行う市民への暴力の責任者に制裁を科すことで合意した。
ルカシェンコ氏がこれ以上、大統領の座に固執することは許されない。大統領選をやり直して新しい指導者を選ぶことが求められる。
ベラルーシ情勢をめぐって、焦点となるのはロシアだ。ロシアは歴史的に、同じスラブ民族が主流のベラルーシを自国の勢力圏と見なしている。ベラルーシで親欧米政権が誕生すれば、ロシアにとっては安全保障への脅威となる。
ベラルーシと同様にロシアが「兄弟国」と見なすウクライナでは2014年2月、親欧米派のデモで親露派政権が崩壊し、ロシアが軍事介入してウクライナ南部クリミア半島を併合する暴挙に出た。ベラルーシで同様の事態が生じることは何としても避ける必要がある。
もっとも、ロシアのプーチン大統領とルカシェンコ氏の関係には近年、経済統合をめぐり不協和音が生じていた。ロシアは政権交代も含め、自国の影響力を最大限維持できる形で事態を収拾しようとしているようだ。
しかし、プーチン氏自身が今年7月の憲法改正で36年までの大統領続投を可能にするなど独裁的な体制を強化している。ロシア主導では、たとえ政権交代が行われてもベラルーシの民主化が進むとは考えにくい。
民主化実現に尽力を
日本は欧米と連携してルカシェンコ政権に圧力を加え、ベラルーシの民主化実現に尽力すべきだ。