防災の日 コロナ禍、避難に知恵絞れ
今夏は九州豪雨で熊本県の球磨川が氾濫し、多くの犠牲者が出た。大雨の被害は九州だけでなく東北や北海道に及ぶなど、自然の脅威は新たな段階を迎えている。きょうは防災の日。新型コロナウイルス禍にあっても自然災害から身を守る備えを怠ってはならない。
6割が自宅避難選択
突然の大雨、川の氾濫、住居への浸水、戸惑う住民の避難……が、今年も繰り返された。新型コロナの感染拡大で避難所の収容人数が限られ、他の施設への移動を余儀なくされた地域もあった。また昨年から警戒レベルは5段階と複雑になり、いつ、どこへ避難すべきかは自己責任であり、かなり難しい選択を強いられることになった。
DCMホールディングス株式会社が7月に行った「コロナ禍における防災アンケート」(283人の有効回答)で、避難所へ行くことに抵抗感が強まったかを尋ねたところ「非常に強まった」と回答した人は29%、「強まった」と回答した人は40%で、計7割の人が避難所へ行くことに抵抗感を感じている。そして6割の人が避難所以外での、いわゆる「自宅避難」をすると回答。避難所での感染などの不安を抱えている。
今年の総合防災訓練では、恒例の住民参加の大規模な訓練を取りやめる自治体が少なくないが、避難のあり方について十分な議論と実践訓練が要る。
一方、線状降水帯や高気圧の重なりなど、地球温暖化による異常気象で豪雨被害が全国各地に及んでいる。異常気象の未来予測が不確かである以上、目下の河川対策の強化、中長期の豪雨対策のロードマップ作りが必須だ。国、自治体、住民が一体となって取り組まなければならない。
氾濫した球磨川水系の場合、既に氾濫防止の現実的な解決策として、1966年には上流に川辺川ダム建設が計画された。しかし、2009年発足の民主党政権が建設中止を決定。その後、球磨川水系ではダムに代わる抜本的な治水対策が実施されてこなかった。ダムの効用に改めて光を当てるべきだ。
日本の河川は勾配が急で流れが速く、多量の雨が降っても短時間で海に流れ出てしまってその水を十分に利用できない。また大量に雨が降った直後は水かさを増し、洪水を起こしたり、干上がったりすることもある。安定的に水を利用し、制御するにはダムを造る必要がある。
河川対策では、森林形成も重要である。伐採による貴重な自然林の減少によって、水源における保水力の低下、渓流や湖の水の汚染、洪水の多発など、さまざまな問題が起きている。半面、日本の森林はスギやヒノキといった人工林が多く、以前は利を生まないとして手をかけずにいたため、森林の公益的機能が衰えている山も少なくない。
防災は町づくりの一環
農業、林業、漁業など地域に根差した全ての産業は、土地の水のシステムによって成り立っている。また地域や町を貫く河川は、住宅地の環境形成にも大きな役割を担っている。防災対策は全国の多くの自治体、住民にとって町づくりの一環であることを肝に銘じてほしい。