ファイブアイズ 日本は参加に向け体制整備を
英語圏5カ国の機密情報共有枠組み「ファイブアイズ」が中国包囲網の形成を進めるなど、存在感を高めている。最近、日本も加えて6カ国体制とする案が出ている。
ファイブアイズはすでに、北朝鮮の挑発を抑えるために日本や韓国、フランスと連携している。アジア太平洋の安定を脅かす中国を牽制(けんせい)する上でも、この枠組みへの正式参加を検討する時期に来ている。
スパイ防止法制定が課題
ファイブアイズ構成国の外相は8月、香港政府が立法会(議会)選挙の1年延期を決定したことなどに「重大な懸念」を示す共同声明を出した。声明は香港の安定と繁栄の基盤となる民主的プロセスを損なうという5カ国の共通認識に基づく。
同時に、香港国家安全維持法(国安法)の施行についても「香港市民の基本的な権利と自由を侵害している」と批判。武漢発の新型コロナウイルスのみならず、香港問題への対応をめぐって中国への警戒感を強めているからに他ならない。
ファイブアイズは、アングロサクソン系の英語圏5カ国が、UKUSA協定に基づいてつくる機密情報共有の枠組み。1946年に米英が始め、50年代までにカナダ、オーストラリア、ニュージーランドが加わった。世界中に張り巡らせたシギント(通信を傍受して分析する、軍事・安全保障上の諜報〈ちょうほう〉活動の総称)の設備や盗聴情報を共同で利用する。
日本は5カ国とは以前から情報を共有してきたものの、枠組みには加わっていない。日本の枠組み参加は、自由と民主主義を基調とし、人権や法の支配といった基本的価値を守る国々との団結を国際社会に示すこととなろう。同時に、情報流出の阻止を図るスパイ防止法などの整備促進の機会となる。これは主として日本側の問題であるが、機密を守る体制整備が課題となる。法整備のみならず情報収集体制の拡充も強く求められる。情報遺漏が起きないだけの信用ある体制が欠かせない。
今の日本では、中国の台頭や北朝鮮の核開発問題、米国の相対的衰退を含めた環境の変化を認識し、対応の必要が急務だとの意識が強まっている。日本としてはインテリジェンス能力の強化を図る中で、ファイブアイズのメンバー入りを検討する好時期にあると言える。
米国は民主主義国と対中包囲網をつくる方針を出しており、米下院情報特別委員会は日本のファイブアイズ入りを勧めている。日本との連携を強化し、中国の勢力拡大に対処する構想だ。河野太郎防衛相は7月、英議会のトゥーゲンハット外交委員長ら議員団とのビデオ会議で、ファイブアイズに日本を加えて「シックスアイズ」にするアイデアに「歓迎する」と前向きに応じている。
中国を念頭に連携を
信頼できる国々と分担して情報収集する利点は大きい。中国を意識したインテリジェンス分野での日米連携を図り、さらにはより独立した能力を高める一環としてファイブアイズへの参加を目指し、そのための準備を進めるべきだ。