次世代につながる友好関係を
台北駐日経済文化代表処 謝長廷代表
5月20日に就任1周年を迎えた蔡英文総統は、就任以来、内政と外交いずれも積極的に取り組み、新たな政策を矢継ぎ早に打ち出してきました。蔡総統は、台日関係を特に重視しており、この1年間で大きな進展がありました。
まず、日本の公益財団法人「交流協会」が、今年1月に「日本台湾交流協会」に改名され、日本の対台湾窓口機関であることがより明確になりました。続いて、台湾の対日窓口機関である「亜東関係協会」も「台湾日本関係協会」に改名されました。これは台日関係の新時代の象徴と言えるでしょう。
昨年、台湾と日本の往来旅行者数は約610万人に達し、過去最高を更新しました。そのうち台湾から日本が約420万人、日本から台湾が約190万人でした。近年は高校生の国際教育旅行の往来も盛んになり、昨年は台湾から日本が260校、9873人、日本から台湾が322校、3万6192人でした。若い世代から台日間の交流が深まることは、未来の台日関係の発展に大きく寄与することでしょう。
台湾と日本は、地理、歴史、文化的に近く、経済・貿易関係のみならず、普段からさまざまな人的交流があり、災害時にはお互いに助け合い、家族のような付き合いがあります。世界の国際関係を見渡すと、良好な隣国関係を築くことは容易なことではありません。台湾と日本のような友好関係は世界でも稀(まれ)であり、世界平和の模範となると確信しています。
海を挟んで国境を接する台湾と日本は、漁業水域等をめぐり、意見が対立することもありますが、海洋協力を進めるために台日間で設置した「台日海洋協力対話」の枠組みの下、今年4月に「漁業協力ワーキンググループ」会議が東京で開催されるなど、話し合いを通して課題解決に取り組む制度がつくられています。
蔡総統は就任以来、経済政策の目玉として「5+2産業イノベーション」を推進しており、「アジアのシリコンバレー」「スマート機械」「グリーンエネルギー」「バイオテクノロジー」「国防」ならびに「新農業」「循環経済」の発展に力を入れています。さらに蔡総統は、東南アジアおよび南アジアの国々との経済、文化、人材交流など多面的な関係を強化する「新南向政策」を打ち出しており、新産業の研究開発やアジアの市場開拓、サプライチェーンなどの面で日本とのビジネス連携のチャンスも増えていくことと期待しています。同時に、台湾は日本との経済連携協定の締結も望んでいます。
台湾は国際機関への参加を各国と協力しながら推進しており、特に医療・保健分野での台湾の貢献は大きく、多くの国の医療の改善に役立っており、世界は台湾を必要としています。5月22日より、スイス・ジュネーブで世界保健機関(WHO)の年次総会(WHA)が開催されます。引き続き台湾のWHAオブザーバー参加への日本の支持が得られることを期待しています。
英国の欧州連合(EU)離脱や米国の政権交代など、国際情勢の急速な変化は、台湾にとって大きな挑戦となるものですが、これは転機でもあります。この変化に対応し、アジア太平洋地域の平和と発展を維持するためにも、自由、民主主義、人権など普遍的価値観を共有する台湾と日本の緊密な協力がより一層重要となります。引き続き日本各界の皆さまのご支持とご協力を得ながら、共に次世代につながる台日友好関係を築いていきたいと思います。