巧妙化する中国の尖閣領有権主張 米中経済安保調査委 ラリー・ウォーツェル氏

300

中国の防空識別圏設定

 【ワシントン早川俊行】米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」の委員で、中国軍事戦略の専門家であるラリー・ウォーツェル氏はこのほど、世界日報の取材に応じ、中国が沖縄県・尖閣諸島を含む東シナ海に防空識別圏を設定したことについて、「中国政府は尖閣諸島に対する領有権主張を強化し、中国沿岸から監視・管轄する空域を拡大する手段として、新たな防空識別圏を利用している」と指摘した。その上で、中国の習近平政権による領有権主張は、胡錦濤前政権より「巧妙化している」との見方を示した。

 ウォーツェル氏は、中国による防空識別圏設定には、日本が2010年に沖縄県・与那国島上空を縦断していた防空識別圏を台湾側に拡張させたことへの対抗措置の意味合いもあると分析。オバマ米政権が2機の戦略爆撃機B52を飛行させたことについては、「完璧な軍事的対応だった」と高く評価した。

 一方で、オバマ政権が自国の民間航空会社に中国への飛行計画提出を容認したことで、提出自粛を要請した日本政府との対応の違いが表面化しているが、ウォーツェル氏は、オバマ政権の措置を「乗客を危険にさらすのを避ける正当な行為だ」と指摘。「全ての国に防空識別圏を設定する権利がある。政府が国際民間航空機関(ICAO)のルールに沿って設定された防空識別圏を民間航空機に無視させ、市民を危険にさらすのはばかげている」と語った。

 中国の防空識別圏設定が東シナ海で不測の事態を引き起こす可能性については、「通報せずに防空識別圏を飛行した外国の軍用機に対して中国機が出動した場合、中国のパイロットが慎重で安全な対応をしなければ、衝突の危険性は高まる」と懸念を示した。民間航空機については、「飛行計画を提出し、ICAOの手続きやルールに従って運航する限り、衝突のリスクは高くない」との見方を示した。

 習政権は胡前政権より強硬姿勢を強めているように見えるが、ウォーツェル氏は「胡氏も東シナ海、南シナ海の争いでは極めて対立的・攻撃的で、日本やフィリピン、ベトナムに対して決して譲歩しなかった。習氏の下で行われた防空識別圏をめぐる最近の動きは(前政権時代とは)異なり、ある意味、巧妙化している。ただし、対立姿勢を強めたようには見えない」と語った。