台湾のコロナ対策は世界にも役立つ


寄稿 中華民国(台湾)衛生福利部長 陳時中

WHO総会不参加

 新興感染症による人類の健康、経済・貿易、旅行への脅威は、これまで途切れたことはなく、感染症のパンデミックは国際航空輸送によって、世界各地への拡散が加速している。現在では、2019年末に中国の武漢から広がった新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により、2021年5月9日までに、世界で約1億5700万人が感染し、327万人以上が死亡した。これは世界の公衆衛生、経済、社会などの各面において、極めて大きな衝撃を及ぼし、各国が国連の「持続可能な開発目標」(SDGs)の実現に向けて行ってきた努力にも深刻な脅威となっている。

衛生福利部長 陳時中

 

 台湾は地理的に中国に隣接しており、この感染症の影響を最も深刻に受ける国の一つと予測された。しかし、我が国は2003年に「重症急性呼吸器症候群」(SARS)に対処した経験があったことから、得られた警戒情報を軽視しなかった。絶えず更新される様々な公式および非公式の情報に基づいて、この新興疾病の拡散や深刻さが、世界各界の認識を超えていると判断した。2019年12月31日より各種の情報を十分に活用し、監視・モニタリングを強化した。2020年1月21日に最初の感染症例が発生後、この疾病に対し、さらに次々と公衆衛生の感染阻止措置を実施した。

 迅速かつ効果的な公衆衛生の抑制措置によって、COVID-19が台湾にもたらした経済への影響は比較的軽微だった。我々は、必要な国際、社会、経済、貿易活動を維持するために、関連する船舶および航空輸送に対して、人員の検疫措置をフレキシブルに調整した。それにより、漁業、洋上風力発電所、航空業は引き続き運営することができ、台湾の2020年のGDPは約3・11%の成長となり、その中で第4四半期は4・94%も成長し、世界がリセッション(景気後退)となっているのとは顕著な対比を示した。

 また、国民の政府に対する信任および協力は、今回台湾でCOVID-19パンデミックを抑制するための重要な要素の一つとなっている。政府は合理的な対処、最小限の損失、順序立てて徐々に前進などの原則を堅持し、疾病管制規定を制定し、国民の知る権利を満たすと同時に、個人情報の保護と自由を守るよう努め、公平の原則も堅持し、社会的弱者(外国人労働者を含む)を優先的に守り、能動的に国民の期待に応えるようにした。

台湾

 

 COVID-19パンデミックの中で台湾は、健康権と保護を強調すると共に、国民の権利を侵犯することに強く反対し、人々の自由な表現、集会、公共活動への参加などを制限することはなかった。

 COVID-19パンデミックは、あらゆる国々に深刻な衝撃をもたらした。とりわけ、「脆弱」「高リスクに直面」「良好な医療サービスを受けられない」「管制措置により損失を被る」といった人々への影響は、より一層大きいものがある。台湾は国際社会の責任あるメンバーとして、世界保健機関(WHO)および世界の公衆衛生のリーダーらとの協力に最大限の努力をし、一人ひとりがいずれも健康な生活スタイルと労働条件を享受できるよう確保していきたい。

 我々は健康への不平等な状況も監視・モニタリングして、それによりあらゆる人々が質の高い医療衛生サービスを受けることができるよう効果的に促していくことを願っている。

 COVID-19の感染状況は、台湾を世界の公衆衛生ネットワークの外に置いてはならないということを改めて実証した。

 我々は、世界の新興感染症の脅威に対する監視・モニタリングおよび警報システムの中で、欠けてはならない一環なのである。しかも台湾はパンデミックの中で、バイオ医薬による治療および関連ツールについて、迅速な研究開発および製品の生産力(2種類のCOVID-19ワクチンの第二段階の治験中を含む)を展開している。そのため、台湾が世界のCOVID-19検出試薬、ワクチン、治療薬の供給プラットフォームに全面的に参加できたならば、世界と協力し貢献できるのである。

 我々は、WHOおよび関連各方面が台湾をWHOに入れることを固く支持し、台湾がWHOの各種会議、メカニズム、活動に全面的に参加し、世界各国と手を携えて、WHO憲章の「健康は基本的人権」および国連の持続可能な開発目標の「誰一人取り残さない」のビジョンを共に実行していくことを呼びかけるものである。