新時代の台日関係を共に
台北駐日経済文化代表処代表 謝長廷
蔡英文総統は5月20日に2期目となる第15代中華民国(台湾)総統に就任しました。
蔡総統は2016年に就任以来、この4年間で年金、労働法制、グリーンエネルギー、台湾への再投資促進、少数派権利保護といったさまざまな改革に果敢に取り組み、着実に成果を上げてきました。今年1月の総統選挙で蔡総統が再選されたことは、蔡総統の施政路線が国民の大きな期待を背負っていることを意味します。
今年は新型コロナウイルス肺炎の感染が中国から世界各国へと拡(ひろ)がりました。中国に隣接する台湾は、早い段階から警戒を強め、水際対策と感染者と接触者の隔離を徹底しました。さらにIT技術を応用した感染情況の可視化と誠実な情報公開により、国民が団結して協力の輪が形成され、市中感染の発生を封じ込めることに成功し、世界の防疫の模範となる「台湾モデル」を築くことができました。
今回の新型肺炎の世界的流行は、国際感染症の防疫に世界のすべての国の協力が不可欠であることが改めて明らかになりました。台湾の防疫の経験が世界に役立てられることを願うと同時に、台湾が完全な形でWHO加盟国と情報を共有できるよう望んでいます。また、台湾と日本が今後、感染症対策、ワクチン開発、防疫物資生産のサプライチェーンなどの分野でも協力を深めていけることを期待しています。
台湾と日本は地理的、歴史的に古くから緊密な関係が築かれ、とりわけ災害が起こったときには、お互いが助け合う「善の循環」が形成されています。常に相手を思いやる「心と心」の強い絆があり、まさに「困ったときの友こそ真の友」といえます。
台日間に正式な国交がないことは、国際政治の現実とはいえ極めて残念なことですが、我々はできることから良い関係を構築していけるよう常に努力しなければなりません。
私は着任以来この4年間、台日の地方交流の強化に力を入れてきました。台日の地方自治体間には131件の友好交流協定が締結されており、そのうち69件が私の任期中に結ばれました。地方レベルの友情をしっかり築いてきたことは、長期的な台日関係に必ずプラスとなると確信しています。
また、日華議員懇談会をはじめとする日本の国会議員の方々にも日頃から台日関係の推進に多大なご支援をいただき、感謝しています。
世界の変動が激しくなる中、日本が主導するCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定)はますます重要です。昨年の台日間の貿易総額は673億㌦に達し、これは日本とCPTPP加盟国のどの国との二カ国間貿易額より大きいものです。
台湾のCPTPP参加は日本および各加盟国の利益にもなることであり、引き続き日本各界の支持を得ながら参加できることを望んでいます。
台日両国の末永い友好のために、今後も世界の隣国関係の模範となれるよう、皆様と新時代を一緒に切り拓(ひら)いていきましょう。