潜在力秘めたフロンティア、TICAD7で投資に期待
「世界最後のフロンティア」と呼ばれるアフリカ。植民地からの独立、内戦や部族・宗教間紛争に悩まされた20世紀を経てなお時代に取り残され、テロ、感染症、飢餓などのリスクをはらみつつも今世紀は安定化する趨勢(すうせい)にある。国連が推進する「持続可能な開発目標」(SDGs)達成のチャンスが訪れている。
アフリカは潜在力を秘めており、石油・鉱物など資源は豊富で、日本の80倍もある3037万平方キロメートルの大陸に55カ国13億人が住み(日本は「西サハラ」除く54カ国を承認)、人口増加率は約2・6%、各国の平均年齢は10代から20代と若い。
サハラ砂漠以南(サブサハラアフリカ)48カ国のここ数年の平均経済成長率は5・3%と先進諸国を上回っており、2030年の経済規模は5兆ドルと予想される。このため先進・新興各国が投資に関心を注いでいる。
わが国は1993年にアフリカ開発会議(TICAD)を立ち上げた。今年は8月28~30日に横浜で第7回目(TICAD7)が開催される。既に昨年から焦点となるテーマごとに関連イベントが行われており、11月29日には、アフリカ開発銀行(AfDB)の「プレTICAD7セミナー」が東京都内で開かれた。
アフリカの国々の日本への期待は高い。駐日アフリカ38カ国外交団長を務めるエリトリアのエスティファノス・アフォワキ大使は、生産への参加と日本市場への進出などアフリカ側の希望を伝えるとともに、日本側参加者に「アフリカについて語るだけでなく私たちに語り掛け、私たちの国を訪問してほしい」と訴え、具体的な行動を求めた。
コートジボワールからネット参加したAfDBのエレン・ケレクチ農業金融・農村開発局首席投資官は、広大な土地のあるアフリカで特に有望な開発分野として農業を挙げた。しかし、アフリカは「年350億ドルの食料純輸入国だ」と現状を嘆く。このため農業開発は、経済成長と地方の貧困、若者や女性の雇用を同時に解決すると強調した。
「TICAD7をビジネス・サミットにしたい」と期待したのは、外務省中東アフリカ局アフリカ部の齋田伸一参事官。現在、日本企業は約800社がアフリカに進出しており、さらに投資の流れを加速する構えだ。
ただ、インフラ不足への不安のほか、セミナーで発言した企業関係者からは「金利が高い」「忍耐がいる」「トップダウンでないと物事が進まない」などの声も聞かれた。齋木氏は、TICAD7が各国首脳と企業側との意見交換によってビジネス環境の改善を促す機会になると展望した。
前回のTICAD6(16年、ケニア・ナイロビ)で安倍晋三首相は、3年間で官民3兆円の支援を約束。生産現場の人材3万人、指導者1500人、生産性3割、感染症対策の専門家2万人、基礎的保健サービスを受けられる人口200万人――の増加を果たすなどの目標を掲げた。
TICAD7では、民間投資による開発を本格化させるため、引き続きイノベーション、人材育成、開発の大前提となるアフリカの平和と安定などが重要テーマとなる。
(窪田伸雄)