ワクチン後進国というウソ
予防という名の人体実験
「子宮頸がんワクチン被害」を追う(14)
この8月、東京・世田谷区の国立成育医療研究センターで「ワクチンギャップを考える」というシンポジウムが開かれた。主催は朝日新聞。
杉並区で最初の子宮頸(けい)がんワクチンの重篤な被害者が出たことをスクープしたのが朝日なら、副反応のことを1行も書かないワクチン推進の全面広告を頻繁に掲載してきたのも朝日だ。
集まった小児科医、産婦人科医らの中には、同研究センター総長の五十嵐隆氏ら、子宮頸がんワクチン接種の「積極的勧奨の再開」の是非を25日に決める、厚生労働省ワクチン副反応検討部会のメンバーも含まれていた。
会場からの質問も録音、撮影も一切禁止だった。
専門医師がパワーポイントを使って、ワクチンが、ジフテリア、百日咳、麻疹、破傷風など多くの疾病を予防し、その死亡者を減らしてきたことをアピールした。
ある小児科医からは、ここ4年間でワクチンの種類が急激に増えてきていることが指摘された。
子供たちが2歳までに打つようになっているワクチンは実に11種類。何種類か同時に接種したり、複数のワクチンが混ざった混合ワクチンが開発されている。
五十嵐同研究センター総長は「基本的に国が認可して打たれているワクチンは大きな問題はない、と理解されたと思う」と医療行政の妥当さを納得させようとしていた。
だが、帝京大学医学部附属溝口病院の渡辺博氏(小児科)は、日本が、経済協力開発機構加盟36カ国中、唯一、おたふくかぜワクチンを定期接種化していない国だなどと強調。
欧米のような「ワクチン先進国」に比べ、日本が「ワクチン後進国」であるということを印象づけた。
そのうえで、子宮頸がんワクチン接種の積極的勧奨の中止に触れ、「20年後、子宮頸がんを患う人たちが、他の国と桁違いに多くなっていよう」と述べた。
スライドで、文明的に取り残された島とされるガラパゴス諸島を映し出した。
おたふくかぜワクチンは、新三種混合ワクチンのなかに含まれていたが、1990年代はじめ、同ワクチンにより、無菌性髄膜炎の発生率が高いことが問題になり、公的助成のワクチンから外れ、今では任意接種になっている。
子宮頸がんは性関係によってうつるウイルスが原因であり、個人の行動によって左右される病気である。
幼児が、いや応なく空気感染などで罹(かか)る疾病と根本的に異なる。
これまでの慎重な対処によって生じたギャップ(遅れ)を利用し、子宮頸がんワクチン接種の積極的勧奨の再開が、ギャップを埋めるに不可欠なこと、と思わせようとしていた。
有料で子宮頸がんワクチンを受けさせ、重い副反応に苦しむようになった20歳の娘を持つある母親は、「私が強引に受けさせてしまった。でも私は日本を信じていた」と涙ながらに語った。
今後、国民の信頼を取り戻せるかどうかは、25日に開かれる厚労省の副反応検討部会の判断にかかっている。
(山本 彰)